私の身に、王道展開なんてあり得ません

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「じゃあ君のオススメを、ぜひ教えて欲しい」 「……オススメ、ですか?」 え、何、突然……。 そう思いながら目の前の、普通なら私とは同じ世界線でまず出会うはずのないような彼をまじまじと見る。 「うん。せっかく来たならここはやっぱり常連さん一推しのメニューを食べておきたいなと」 ……ほぉー。なるほどね。それは確かに賢い選択の仕方だ。それなら絶対に外さないもんね。っていうかそもそもここはどれを食べても美味しいんだけど。 彼の私を見つめる笑顔からは、何ていうか人に警戒心を抱かせない柔らかさというか、穏やかさみたいなものが滲み出ていて。 私なんぞにオススメを聞いてくるその人懐っこい顔に釣られて、私はつい淡々とオススメを語ってしまった。 「うーん、どれも全部オススメですけど、お肉がお好きならここの唐揚げ定食は外せませんね。醤油ベースのタレでニンニクも効いていてとても美味しいんです。でももしお肉よりもお魚派なら、味噌が濃厚でご飯が進むサバ味噌定食か、海老と季節野菜の天ぷら定食が一推しです。衣が軽くてサクサクでペロリといけちゃいますよ」 「へぇ。それはどれも美味しそうだなぁ………。うーん………。よし、今日は天ぷらにしてみよう」 そして私のプレゼンに、顎に手を当ててしばらく楽しそうに考えていたイケオジが今日のランチを天ぷら定食に決めた時。
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