私の身に、王道展開なんてあり得ません

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「またそんなこと言って!だったら灯さんももっとオシャレしましょうよ!今時地味過ぎます!前から思ってたんですけど何なんですか、そのただ一つに引っ詰めただけの髪にそのしてるんだかしてないんだか分からない薄いメイク!メガネで誤魔化せると思ったら大間違いですからね⁉︎」 地味……。言い切ったな、この子。まぁ自覚してるけども。 胸の辺りまである、生まれてこの方一度も染めたことのないストレートの髪は、いつも耳より少し低い位置で一つに纏めている。もちろん可愛いヘアゴムなんかは使っていない。 それに別にメガネで誤魔化してるつもりはない。 このメガネは伊達ではなく正真正銘の度入りのメガネなのだ。裸眼で0.5ほどの視力の私は、ないと見えないから掛けてるだけ。 「それにそのリップだってただのメンソレータムですよね⁉︎」  話半分に聞きながら徐に引き出しからリップを取り出しひと塗りすれば、それすらもダメ出しされる始末。 「しょうがないでしょー、カサカサするんだもん唇が。っていうか珠理ちゃんはリップに実用性以外の何を求めてるんだ」 「女子力ですよ、女子力!」 「大丈夫大丈夫、私なんぞに女子力なんて求められてないから」 「そう言う問題じゃありません!意識の問題です!それにその服!」 「え、なに……!」 適当に返したら服にまでダメ出しが飛んで来た。 ビシっ!と桜色の綺麗なネイルが施された人差し指を向けられ、思わず自分を見下ろす。 レーヨンスキッパーブラウスに、ウェストがゴムなのにキチンと見えするワイドパンツ。両サイドにはポケットもついていて非常に実用的。オフィスでは何の問題もないと思うのだけれど、これのどこがダメなのだ。
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