私の身に、王道展開なんてあり得ません

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「うちの会社、服装に縛りないんですよ⁉︎なのに何でいっつもまるで制服みたいに同じようなの着てるんですか!」 「あ、そういうこと?だって着心地いいし落ち着くんだもん、これが一番。だから上下ともユニクロで全色買いしてるの。っていうか珠理ちゃん、若くて可愛いのに説教くさい。……あ、大変、ふじさわ食堂混んじゃうから私もう行くね、お先ー」 「あっ、逃げた……!」 私はわざとらしく自分の腕についている何の可愛げもない皮ベルトの腕時計を見やって、お財布を引っ掴み珠理ちゃんの前から脱兎の如く逃げ出した。 深町 灯(ふかまち あかり)25歳。 スナック菓子メーカーの営業事務をしていて、後輩に容赦のないダメ出しを食らうほどお洒落や美容には無頓着な、自他共に認める地味女。 どのくらい地味かと言うと、 "……深町さん?ええっと……、ああ、あの引っ詰め髪にメガネの地味な人ね" "そうそう、あの黒髪にメガネの地味な人" と、私を形容する時は大体みんなこの髪とメガネくらいにしか私の特徴を見出せない上に、思いっきりストレートに地味と言われてしまうくらい。 対するは、仮にも先輩に物怖じ一つせずダメ出しを連発する後輩、中村 珠理(なかむら じゅり)ちゃん23歳。 密度の濃い睫毛に縁取られたくりくりの瞳にうるつやのぽってりした唇。いつもふんわりとしたオフィスカジュアルに身を包み、下ろせば肩下くらいまであるブラウンの髪はそれどうなってるの?ってくらいいつも凝ったヘアアレンジを施している、今時の可愛いキラキラ女子。
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