私の身に、王道展開なんてあり得ません

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「……ーーーーこんなおじさんがごめんね?お邪魔します」 だけど、今日の分の無料ガチャを引きながらおばちゃんに案内されて来た男性客を見て、私は一瞬息を飲んだ。 だって、その人が身に纏っているのはいかにも仕立ての良さそうなダークブラウンのスリーピースのスーツ。 椅子を引くその腕からチラリと覗くのは、ブランドに疎い私にも高級そうなことだけは分かる、大判フェイスの立派な腕時計。 それに何よりふわりと微笑んだその顔は、全然おじさんなんかじゃない。 若く見えるけれど、30代後半くらいだろうか。少し垂れ気味の涼しげな目元にスッと通った鼻筋、薄い唇。襟足長めの焦茶の髪はすっきり後ろに流していて清潔感がある。 背は高くて割と肩幅がっちり。まるで二次元の世界から飛び出して来たみたいな完璧なイケオジ。たぶんここでは初めて見る顔だ。 ……うわー、何かすごいの来た……。 そう思いながらどうぞ、の意味を込めてペコ、と軽く頭を下げ、今しがた引いたばかりのガチャ結果に目を落とす。 「……うわっ⁉︎マジで……⁉︎」 つい興奮して口をついて出てしまったのは、なんとそこに無料ガチャではなかなか出ないとされているSSRのキャラ、しかもその中でもさらに出現率が低いとされているそれはそれはもうレアなキャラがそこで虹色に輝いていたから。……ヤバイ!こっちもすごいのキタ!
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