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【第一章】守ってあげる
「さあ、次は誰が相手する?」
かかって来なさい!とでも言うように、
右手でクイックイッと手招きをした。
立花凛(リン)。
丘の上小学校6年生の女の子だ。
スラッと背が高く、スタイルが良いため
中学生くらいに見える。
凛の足元には、
同じ歳くらいの少年が3人、
地面に倒れ手足をバタバタさせて苦しんでいた。
「いててて‥」
凛は勝ち誇ったように腕を組み、
足元の少年たちを見下ろした。
「ハルくんをいじめるからよ。
今度こんな事したら‥」
その時、凛の背後から
一人の少年が飛びかかって来た。
大山大輔という隣のクラスの少年だ。
何かと陽翔をイジメる。
今回の喧嘩も大輔が吹っかけて来たのだ。
「リンちゃん!
あぶない!!」
建物の影にいる少年が悲鳴を上げた。
凛はミディアムの髪を靡かせて振り向くと、男の子の腹部に強烈なパンチをお見舞いした。
「ドン!!」
男の子はその場に崩れ落ちた。
「卑怯な男は嫌い!」
そう言い捨てると、
凛は男の子たちの方に向き直って言った。
「文句があるならハルくんじゃなくて、
私に言いなさい!
いつでも相手してあげるわ!」
三人の少年は立ち上がると、
地面にうずくまっている少年を助け起こし
逃げて行ってしまった。
「ハルくん!
出て来て良いわよ!」
ハルくんと呼ばれた男の子が
建物の影から出てきた。
山咲陽翔(はると)。
凛より一回り‥いや、
二回りは小さい。
二人が並ぶと姉弟に見えるが
姉弟ではない。
同じ小学校のクラスメイトであり、
家が隣同士の幼馴染だ。
「今度いじめられたらすぐに私に言いなさいよ。
守ってあげるから。」
「ありがとう、リンちゃん」
陽翔は恥ずかしそうに笑った。
ハルくんの役に立っている。
凛はそれだけで嬉しかった。
私の命を助けてくれたハルくん。
今度は私がハルくんを助ける番だ。
一年前、
陽翔は凛を庇って交通事故に遭い、
大怪我をした。
凛は軽傷、
陽翔は順調に回復して、
怪我の後遺症は殆ど無くなったのだが、
凛は、小さい頃から当たり前のように一緒にいた陽翔が、突然いなくなってしまうのではという恐怖にかられるようになっていた。
凛の中で、陽翔を守らなくてはと言う思いが日に日に強くなっていった。
そんな中、
体の小さい陽翔を狙ったイジメが起きた。
それが先程の大山大輔。
大柄な少年だ。
三人の子分のような少年を引き連れて校内を我が物顔で歩いている。
大輔は女の子とイチャイチャしている陽翔が
気に入らないようだった。
事ある毎に陽翔をイジメていた。
当然、凛はこれを許さなかった。
果敢にも、大柄な大輔に喧嘩を挑んでは何度もやり返されたのち、
このように束になってかかられてもやり返すだけの強さを手に入れた。
今回もいじめをやめさせようとした結果、
このような大喧嘩をする事になったのだ。
決して自分から手を出した訳ではない。
少々調子に乗った感は否めないが。。。
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