【第二章】凛の決意

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【第二章】凛の決意

「ヤッ!!」 「ハッ!!」 真夏の日差しが照りつける中、 街の空手道場は朝から活気のある声が響いていた。 小学生から中学生までのジュニアの部。 数人の男の子の中に凛の姿があった。 凛はその中で一際目立っていた。 前髪を落ちないようにヘアピンで止めたミディアムの髪が突きを繰り返す度に靡いている。 つり目気味の大きな目は意思の強さを物語っていた。 男の子の中にたった一人の女の子だというのもあるが、 女の子の中でもかなりの美人であるため道場でも目立っている。 しかも筋がよく、流れる様に演舞するその姿は既に王者、いや、女王の風格を持っていた。 凛はここで稽古をして 男の子数人を相手に戦える力を身に付けたのだ。 「やめっ!! 礼!! ‥今日はここまで!!」 「ありがとうございました!!」 凛は葵からタオルを受け取ると 汗を拭いた。 「凛!おっつー!」 葵(あおい)、澪(みお)、杏(あん)が声をかけた。 三人は凛の友達だ。 澪が水の入ったペットボトルを投げると 凛は器用にキャッチした。 「誰よりも強そうだった! チャンピオンみたいだったよ!」 杏が手を叩いた。 「見た目だけよ」 凛は白い歯を見せて笑った。 「本当に強くならないと意味ないもん」 「陽翔君のためでしょ?凛」 葵が言うと、 凛は道場の窓から凛を見つめる少年を見た。 「うん!」 窓の外の陽翔が、 ちょっと照れたように見えた。 「空手やればハルくん、 守れると思って。 ハルくんを守ることが 私のしてあげられる たった一つの事だから‥」 「私にはそこまで出来ないな。 偉いよ、凛は一途で。」 澪が感心したように呟く。 「今度の試合、出るんでしょ?」 杏が聞いた。 来月行われる全日本ジュニア空手選手権の事だ。 凛は小学6年女子の部に出場する。 初出場だが凛が目指しているのは優勝である。 「うん!出る! 絶対優勝する!」 優勝して 私でもハルくんを守れるんだって 証明する。 決意を伝えるように、 陽翔を見た。
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