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【第三章】敗北感
大山大輔は敗北感に苛まれていた。
一年前の転校初日、
校内を歩く美しい少女に出会った。
立花凛だった。
一目で心を奪われた。
モデルのように長く細いスラッとした足。
ロングの艶やかな髪、小さな顔に色白の肌、
つり目だが二重の大きな目、ツンと高い鼻。
11歳で既に完成された顔をしていた。
すぐに同じ5年の1組女子だと分かった。
それ以来、凛の跡を追うようになった。
何という名前なんだろう、どこに住んでいるのだろう、好きな子はいるのだろうか‥
そのうち凛と仲良く話す小さな男の子がいる事に気がついた。
あいつは何だ?
弟なのか?友達なのか?彼氏なのか?
二人の会話で幼馴染だとわかった。
そして凛の陽翔に対する異常なまでの愛情に気がついた。
なんだあいつ、女に守られて情け無いやつ、なんであんなヤツが気に入られているんだ?
言い知れぬイライラが募っていった。
その怒りが爆発したのは、
陽翔の一言からだった。
「おい、お前、
なんでいつも立花に守られてるんだ?」
「さあ?」
「自分の事くらい自分で守れないのか?」
「そうかも」
「それでお前はいいのかよ!?」
「リンちゃんがそれでいいって
言ってるんだから、
それで良いんだよ」
陽翔はニッコリ笑って言った。
さも当たり前のように。
その瞬間、大輔は馬乗りになって陽翔を殴っていた。
すぐに凛が駆けつけて大輔を平手打ちすると陽翔から引き離した。
「ハルくんをイジメる子は許さないから!」
そう言って大輔を突き飛ばした。
大輔は力なくよろけ、床にへたり込んでしまった。
陽翔は泣きながら凛に連れられ保健室に行ってしまった。
クラス中がザワザワとしていたが
二人が出て行ってからしばらくすると
何でもなかったように
いつものような喧騒に戻っていった。
大輔だけが呆然とその場に取り残こされていた。
‥なんで凛を怒らせる事をしてしまったんだろう。
あいつだ。
あいつが悪いんだ。
あいつが俺を苛立たせたんだ!
それから陽翔へのイジメが始まったのだ。
「卑怯な男は嫌い!」
そう‥その通りだ。
男のプライドを守ろうとして、
男としてのプライドを踏み躙ったのだ。
最低だ。
凛の声が大輔の耳に残って離れなかった。
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