前世と嘘

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ぐちゅぐちゅと音をたてて入ってきた舌を、僕は必死に絡める。それだけじゃ足りなくて、もっと欲しくて大きく口を開いて深く合わせた。 このまま溶けてしまえばいい。 あの時初めてした時は、その意味が分からなくて突き飛ばしてしまった。だけどその後も夢の中の人に嫉妬して、自分から遠ざかって話さえもしなかった。それを後悔したのはいつのことだったか。どうせ好きでもない人に身体を許すなら、あの時キスぐらいすれば良かったんだ。 何度も何年も思い続けていたことが、いまこうして叶っている。 「・・・ごめん、止まんない」 夢中になって合わせていた唇が不意に離れて開けた目の前に、欲情で上気した顔があった。 「止まらなくて・・・いい・・・」 止めないで。 そう言って口を開けて舌を出すと、そいつは再び噛み付くように唇を合わせて舌を吸う。 キスとしてはおそらく上手くはないのだろう。 歯が当たるほど深く合わせた唇に、やみくもに動きまわる激しい舌使い。ありとあらゆる所を這われ、噛まれ、絡まる。けれどそのどれもが僕を昂らせ、身体がどうしようもないくらいに熱くなる。 ベッドに行くのももどかしい。 ぎゅっと抱きつく僕を後ろに押し倒しながら、そいつも僕のシャツの下に手を差し入れる。その手は口付け同様激しく脇腹を撫で、性急に胸の突起辿り着く。そのとたんビクンと反応した僕の身体に気付いたそいつは、唇を離すとシャツを捲り上げ、つんと立ち上がったそこに吸い付いた。 「あっ・・・」 女の子のように感じるのが恥ずかしい。けれどそんなことを考える余裕もなく、身体が敏感に反応する。 いやらしい音を立てて胸を吸われ、舐められ、もう片方は痛いくらいに指先で転がされる。それだけでも腰が揺れ、下肢は痛いくらいに勃ち上がる。 そんな行為は今までに数え切れないくらいしてきたというのに、こんなにも身体が感じてしまうのは初めてで、どうにもできない快感に僕の目から涙が溢れ出す。 「あっ・・・ぁんっ・・・ん・・・っ」 止まらない喘ぎに唇を噛む。けれども下着に入り込んだ手が後孔に指を押し当てると、その歯は呆気なく離れてしまう。 「あんっ」 ぐいっと入れられる指は、けれどすぐに引っかかってしまう。女の子と違う僕のそこは、自ら潤うことはしない。だけどこの家にはローションなんてないのだ。 僕のルール。 それは決して家でしないこと。 身体を重ねる相手は一夜限り。 キスはしない。 (なま)でもしない。 そして必ず外で会い、ことを済ませばその余韻もなくその場で別れる。 本名も歳も言わない。 連絡先も交わさない。 本当にその場限りだけの付き合い。 だからこの部屋に誰かが来るのは初めてで、そんなこともしたことがないから必要な物は何もない。 だけど、相手が持ってない時のために持ち歩いているゴムが財布に入ってる。あれならゼリーが付いてるから・・・。 それを思い出して取りに行こうと身を起こそうとしたその時、ズボンを下着ごと脱がされた僕はひっくり返されて膝を折られる。そして高くあがった臀に・・・。 「あぁ・・・っ」 ぐちゅっとした音ととも熱く湿ったものが後孔に入り込んでくる。 それがなんであるか頭が理解する前に身体がその感触に震え、一気に下肢を熱くする。そしてその、ぬるっとした柔らかい、けれど芯を持ったものがたっぷりとしたぬめりと共にずりっと中に入った瞬間、僕の身体はぶるっと震えて果ててしまう。けれど後孔のそれはその動きをとめず、たっぷりの唾液を中に流し込む。 「まっ・・・て・・・いま・・・ぁあ・・・っ」 イったばかり・・・。 その言葉は再び喘ぎにかき消される。 唾液で滑りがよくなったそこには再び指が入れられ、拡げるように何度も出し入れされる。さらに前に回ったもう片方の手が放ったぬめりを広げるように早いスパンで扱き上げる。
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