前世と嘘

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「なら、今日時間あるなら一緒にやろうよ」 「え?」 「オレと一緒にクエ回った方が早くレベル上がるし、その方が楽しいよ」 確かにレベルの高い人としたほうが早く上がるけど、僕達今日初めて話したよね?それに僕、あんまり仲良くなる気は無いんだけど・・・。 そう思ったけど、なんかすごく期待の眼差しで見られ、僕は断れなくなってしまった。 「・・・いいよ」 その言葉にぱあっと表情を明るくしたそいつと、僕は放課後いっしょに帰ることになった。 なんで今日に限って何も予定がないんだろう・・・。 僕はうれしそうにしてるそいつにバレないように、そっと心の中でため息をついた。 そして放課後、僕はいつも一緒に帰る友達に事情を話し、そいつと帰ることになった。 「どこでやるの?」 一緒にゲームをすると言っても、場所はどこでやるんだろう?駅前のファストフード? 「オレん家さ、ここから歩いて行けるんだよ。だからうちでしない?」 にこっと笑ってそういうそいつに、僕は頷いた。変にファストフードとかで周りを気にするよりもいいかと思ったからだ。 「でもいいの?急に行っちゃって」 お家の人は大変じゃないかな? そう思った僕に、そいつは大丈夫だという。家には誰もいないんだって。 「うちは両親とも働いてるから、帰ってくるのは夜なんだ」 そういうとまた笑うそいつに、こんなに笑う人だったのかと思ってしまう。 教室ではあまり関わらないようにしようと思っていて、僕はあんまりそいつを見ていなかった。席が前になっても見えるのは後ろ姿だけだったし。 でも他の生徒と話してるところなんて、見てないような気がする。 友達がいないのか、それとも作らないのか、そいつはいつも一人だった。だからと言って別にコミュ障という訳では無いらしく、話し掛けられれば普通に話していたし、グループ活動の時にあぶれたりもしていなかった。 ただ僕が見ていなかっただけかもしれない。 そう思いながら、僕はこれからやるゲームについて説明されながらそいつの家へと向かった。 「近いんだね」 そいつの家は僕が使う駅よりも近かった。学校から歩いて10分くらい。ちなみに駅までは15分かかる。その間に話しただけでも、僕の中でのそいつの印象は大きく変わっていた。 なんでか分からないけどなんか嫌だったそいつは、話してみるととても話しやすく、嫌味もない。それに何も分からない僕に丁寧にゲームのことを教えてくれた。 「こうやって話してもいまいち分からないと思うから、あとは実際にやりながら教えるよ」 そう言いながら僕を家に招き入れてくれたそいつは先に僕を自室に促し、自分はキッチンへと入っていった。 「お構いなく」 一応そう声をかけたものの、おそらくなにか出してくれるのだろう。 やっぱりどこかファストフードにでも行けばよかったかな? なんか気を使わせて申し訳ない。 そう思いながら部屋で待っていると、トレイに飲み物とお菓子を乗せてそいつが入ってきた。 「麦茶しかないけど」 「ううん。十分だよ。ありがとう」 そう言って僕は傍らに置かれた麦茶をひと口いただいた。 もしかして、すごく良い奴なのかも。 そもそもなぜ僕はこいつが嫌だったのか分からない。でも実際に話してみて、こうしてお家にお邪魔すると嫌なところが一つもないことが分かる。 本人は話しやすいし、人に気を使える人だ。部屋もシンプルでスッキリしていて何より片付いている。 ほかの友達の家にも行ったことあるけど、大抵は男の部屋って感じで雑然としているのに、こいつの部屋は本当にきれいだ。 「部屋きれいにしてるんだね。僕の部屋より片付いてるかも」 そう言うと、そいつは照れたように頬を掻いた。 「そう?普通だよ。・・・それより早くやろう。メッセID教えてよ。そこから招待するから」 「うん。ちょっと待ってて」
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