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「いや、別にケンカしたとかそういうことじゃない。なぜか会えなくなっちゃってさ。電話とかメッセージを送るんだけど、返事は来ない。だから連絡も取れない」  涼介が真夜中に現れたあやしげなバスに乗ってから一ヶ月が過ぎた。それから一度も翔太は涼介と顔を合わせていない。  あのおじいさんはいったい何者なのか、あのバスの行き先はどこだったのか、あのバスが行き着いた先にいったい何があったのか。本当に、他人からうらやましがられる人生を手に入れたのか……。  そんなさまざまな疑問に対する答えを、涼介の口から直接聞くこともできないままだ。聞きたいことは山ほどあった。 「じゃあ、涼介が休学したのも知らないのか?」 「休学?」  健人の言葉に、今度は翔太が驚く番だった。 「一ヶ月くらい前だったかな。涼介が大学を休学するよって言ってきたんだ。  涼介の遠い親戚が亡くなってさ、その遠い親戚ってのが会社を経営していたんだって。小さい会社らしいんだけど、涼介の叔父が事業を継いでね。  そのタイミングで、人手不足だし事業に興味はないかと涼介は叔父に誘われたんだって。それで涼介は大学を休学して、今はその会社の事業に打ち込むことにしたというわけ。なにも聞いてない?」  翔太は首を振った。そんなことなど涼介から直接なにも聞いていない。でも、それが涼介の望むところなのだろうし、決めてしまったことだ。 「でも、いいよなあ。就活もしないで就職できてさ。うらやましい話だよ」  健人の言葉に翔太もおおいに同意する。 「そうだね。就活しないで済むってのはうらやましいよな」
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