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 健人との電話を切った翔太は、取引先に向かいながら、さっそくスマホでニュースを検索する。 「邑咲ルナが電撃入籍! 相手は若手の企業経営者!」  翔太はそんな見出しの記事のリンクをクリックする。 「邑咲ルナが結婚したことが事務所を通じて発表された。結婚相手は企業経営者の……涼介さん。まだ三十二歳と若いが、叔父の経営する会社で副社長を務めている。  先代社長が亡くなったあとを引き継いだ叔父とともに経営に参加。この会社はもともと中小企業ではあったが、新社長となってから業績はうなぎ登り。  特に副社長の若いアイデアと巧みな営業手腕で商品が次々にヒット、今では従業員が千人を超え、売り上げも七百億円に達しようとしている。副社長はこの十年で百倍の成長を実現させた剛腕として知られ、今では自然保護活動や子どもの貧困対策にも力を入れている」  気がつけば、翔太は涼介のことがうらやましく思えた。と同時に、翔太の頭にあのときのあやしげなバスに乗った涼介の姿が浮かんだ。  翔太は息を飲む。他人に羨ましがられる人生を送る亮介に嫉妬心に近いものまでをも感じた。  そんな記事を読んだ翔太の胸に、ひとつの想いが芽生えた。  あのとき、涼介が失ったものは……。 (おわり)
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