カウントダウン

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 なんて、馬鹿げたことを考えていた自分が馬鹿だった。人生に「必ず」なんてない。絶対が無いように、「必ず」明日があるとは限らないのだ。  人はいつか死ぬ。死を迎える時なんて誰にも分らない。健康に生きているなら尚更。だから自分が明日死ぬなんてことも思ったりしないのだ。  バンッ、と大きな衝撃音と一緒にぷつりと繊細な何かが切れた気がした。そこからの記憶が僕には無い。記憶はないけど、段々と冷たくなっていく感覚だけは妙に生々しく覚えている。今思えば、血がドロドロと外に出て行っていたんだなと思う。  ああ、死んだっぽい、僕。  心の中で自分を嘲笑した。死んだんだ。必ず明日はあると思っていたのに。明日ちゃっかり友達と遊ぶ約束なんてしていたのに。死んだ、僕。呆気なく短い一生を終えちゃった。乾いた笑い声が漏れだしそうだ。もう死んだから物理的に無理だけど。  人は二度死ぬっていうのは本当だったんだな。一回目は物理的に、二回目は心理的に。  今、僕は物理的に死んだ。だからまだ魂は残っている。だからまだ考えることができる。死んだ自分を嘲笑うことだってできる。まるでまだ生きているかのように、物理的に脳中枢は死んだのに心理的に脳中枢は生きている。  真っ暗な広い部屋で、僕は大の字になって寝ころんだ。床はふわふわしていて、水の上に浮いている気分だ。変な心地。でも悪くはない。欲を言えば明るい場所にいたかったけど、ここは静かで落ち着くしまぁいいか。目を瞑ってふーっと息を吐く。  死んだ後の世界は天国でも地獄でもないのか。それならきっと神様もいないんだろうな。 「いるよ」  僕が目を開けると、目の前には長い白髪の髪を下ろした男がいた。いや、女なのか?
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