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そんなの簡単に決まってる。僕は事故に遭って死んだ。ならその事故に遭わなければいい。そうすれば一発クリアだ。僕は明日を迎えられるし、友達との約束も破らずに済む。楽勝楽勝、そう思いながら赤信号に捕まった。そう言えばここで車が吹っ飛んできて死んだんだよな、僕。
急にドンッって大きな衝撃音と一緒に車がこっちに飛んできて、そのまま僕を巻き込んだ。そう今みたいに、真っ赤な車がこっちに飛んできて──飛んできて?
ドンッと衝撃が走った。そのままプツッと何かが切れる。
目を覚ました時、僕はまたあの暗い部屋にいた。目の前には神様が憐れんだ瞳で僕のことを見下ろしている。
「あんまり油断しちゃダメだよ、トキ君」
「だって……あの事故に遭わなければ、僕は死ななかったんだ。だからいつもより早く家を出ました。それなのに、どうして僕は」
「もう一回、チャレンジする?」
「します」
勿論、するに決まってる。だって僕の寿命はまだまだある。その寿命のたった数十分が削れても、大して問題ない。僕は神様の手を握る。またぐにゃぐにゃと体が変形して、変な心地になった。そして目を覚ました時、また朝がやって来る。三回目の朝。
僕はアラームを止めると、身支度を整え終わった時にふと鏡の前で立ち止まる。二回目では事故に遭う時刻より早くに家を出たのに、同じ事故に巻き込まれた。つまり時刻は関係ない。交通事故というのが引っかかるな。時間が変わっても、僕は交通事故に遭った。ならば、家にいればいいのでは? 外に出たから僕は死んだ。なら、出なければ僕は死なない。ならば、仮病を使って休もう。
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