カウントダウン

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 ニィッと神様が笑った。気色の悪い笑い方をするな。僕は神様の手を取ると、また朝に戻る。さっきので多分四時間くらい使ったけど、問題ない。長い人生の内の四時間なんて一瞬だ。僕はアラームを止めると、気だるげに起き上がった。こうやって何度も死を体験していると、体が変になってくる。気分も憂いでいた。  僕は身支度を整えると、今度はどうやって回避しようかと考える。朝ご飯をもぐもぐと食べながら時間を見た。今日はいつもより少し遅く家を出てみるか。父が仕事の為、家を出た十分後に僕は家を出た。交通事故に遭った時間はもうとっくに過ぎている。でも多分、あの道を使ったら僕は死ぬ。なら別の道を使おう。僕は少し遠回りになるけど、いつもとは違う道に進んだ。狭いから決して車が通れるようなスペースでは無い。これなら交通事故に遭うことも無いだろう。大丈夫だ。 「危ないッ!」  上からそんな声が降ってくる。僕が見上げると、顔を青ざめた中年のおばさんが口を覆って落ちていく花壇を見た。パリンッ──ああ、死んだ。  目を覚ますと、神様が「お帰り〜」と憐れんだ瞳を持って言った。別にここは僕の家じゃないし、帰る場所でも無い。僕はただいまとは言わず、ただスッと神様に手を差し伸べた。神様が「リトライ?」と聞くと、僕は頷く。 「そんなに生きたい?」 「生きたいです」 「私には永遠の寿命があるから、むしろ死に憧れるんだけどな」 「死を必ず迎える人間は生きたいんですよ。神様には分からないかもしれないけど」 「私には分からないね」
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