永遠に不滅だっ!

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永遠に不滅だっ!

   私は夏希。高校3年生のJKだ。みんなは夏希って言うけど、この優夏(ゆうか)だけは私をなっちゃんって呼ぶ。かわいいからお気に入りだ。  明日から夏休みということもあり、浮かれ気味な教室の中で優夏が話しかけてきた。  「なっちゃん! 夏休みにさ、ちょっと遠いとこのプール行こうよ!」  「おっ! いいね✨ どこのプール?」  「ちょっと都会の方にね〜♪」  「えぇー? どこよぉー」  私ははっきりと教えられないまま、高校生最後の夏休みを迎えた。  私服の下に水着を着て、私は待ち合わせ場所の駅前で優夏を待っていた。  5分遅れで優夏はやって来た。  「ごめーん! 自転車がパンクしちゃってさぁ」  「堂々と嘘つくなっ! 自転車持ってないでしょ!」  「てへぺろっ💕」  「うっ……、吐き気が……」  「ちょっと、どういうことよ」  くだらない事を言い合っている内に、電車はいつのまにかきていた。  切符を買い、私達は電車に乗り込んだ。  中は木を基調とされており、温かみのある内装だ。私達はふかふかの椅子に腰を掛け、隣合わせで座った。  「綺麗な電車ね✨ 優夏は乗りたかったの?」  「うん✨ 私の目的のうちの一つだよ!」  「そか✨ 私もこの電車好きかも。落ち着くよね〜」  「でしょ! いいよね〜」  そこまで話すと、私達は外の景色を見た。私達の住む町は辺鄙な田舎だ。都会と聞いただけで心がときめいてしまう。緑が多かった景色も、徐々に白くなっていく。やがて、自然は無くなり、人工物だけになった。着いたのだ。私達の憧れ。東京に。    「東京だっ✨ 凄い✨ ほんとに嬉しいっ✨」  「私、なっちゃんと来たかったの✨ 私も凄い嬉しい✨」  「そうだったの✨ ありがとう優夏✨」  「いいよいいよ✨ ほらっ! もうすぐ駅だよ! 出る準備して!」  テンションマックスな私達は、周りの何でもない物も輝いて見えた。駅の切符。無料で配られたテッシュ。なんでもだ。  駅につきホームに出ると、人が波のように動いていた。じっと見ていたら、酔ってしまいそうだ。私達は都会にのまれながらも、外を目指して進んだ。  「人が凄いねっ……! これは想定内っ……?」  「そんなわけないでしょっ……! 想定外だわっ、なっちゃん……! てっ、てへぺろっ!」  「無理にキャラ通すなってっ……! あっ! 多分あっちだ!」  なんとか外に出ると、私達は木の下のベンチに腰を下ろした。  「凄いね東京ぉ……、さて、どこ行く?」  「ふふふ……、プールと言ったからにはプールだっ!」  「えっ? あるの?」  「ふふふ……、まあ付いて来なさいなっ……!」  「あのさぁ、さっきからなんのキャラ?」  優夏のキャラが不明のまま、私達は歩きはじめた。  「えっとねぇー、スマホちゃんの情報によるとこっちなんだよなぁ」  「うんうん。んでどっち?」  「えーっと……、あ! こっちだ!」  「え? 初っ端からこんな感じ? スマホ、私に貸してっ!」  「見てみ! 絶対なっちゃんでもわからんよ」  …………確かにその通りだった。さっぱり分からない。建物ありすぎでしょ東京……。  「これは……、わからないね……。スマホが役に立たないのは初めてよ……」  「ほんとそれ……、まぁー人に聞きながら行けばなんとかなるっしょ! 行くぜ!」  「男らしい……優夏✨」  それから私達は、道行く人達に聞きながらプールを目指した。お母さんが、東京の人は冷たいって言ってたけど、ほんとに冷たかった。答えてくれない人もいた。別にさ、ちょっと教えてくれれば良いだけなのにね。    1時間かけ、やっと私達は目的地のビルについた。なんと、プールは屋上にあるらしい。なにそれ!? セレブかよ!?  「ねぇ! 優夏! 絶対お値段高いよ!」  「ふふふ……、まぁ見てなっ」  そう言うと優夏は、財布の中からよく分からないカードを取り出し、ここの店員さんっぽい人に渡した。  すると、店員さんっぽい人が笑って対応し、私達を屋上に案内した。  「ねぇ……! どういうこと……!?」  「へっへ〜✨ 私のお父さんのこねみたいなものよ✨」  「はーんっ、なるほどね✨」  忘れてた……。優夏んちは金持ちだったんだ……。  「私、ここになっちゃんと来たかったの! だから凄く嬉しいよ✨」  「私も✨ ありがとう優夏っ!!」  屋上にも人が溢れていた。チャラそうな人もいて、少し怖い。  「金髪いるよ……、あんなのは田舎にいないよね……」  「ねぇー……。目を合わせないようにしなきゃ」  私達は更衣室に入り、水着に着替えた。優夏の水着は可愛かった。私はスク水……。恥ずっ……。  「ひゃぁー……、スク水は恥ずいわ……」  「ここは水着も借りれるよ?」  「そうなの!? 早く言ってよ!」  「いやぁー、私の性癖がっ……」  「やめろエロジジイっ……」  速攻で着替え、私達は流れるプールに入った。  「冷たっ! 気持ちいぃっ! 冷たっ!」  「やばいねっ! 凄く冷たいっ! でも気持ちいいっ!」  水は冷たいが、凄く気持ちよかった。そしてなりより、私は楽しかった。優夏と共有出来ることが、なによりも嬉しかった。      1時間ほど水に揺られ、体もよぼよぼになり始めた頃に私達は水から上がった。指先がおばあちゃんみたいになっている。  売店でメロンソーダを買い、休憩するためにテラスにあるベンチに座った。  「凄く気持ちよかった✨ 連れてきてありがとう優夏!」  「いいよいいよ✨ またさ、大人になっても遊ぼうよ! 大人になって、なっちゃんと遊べなくなるのは寂しい……」  「仕事とか忙しいしね……。でも私達は遊ぼうっ! 一緒に! 時間は有限だけどさ、友情は無限だよ! きっと!」  「うんっ!! 私らは不滅だ!」  「うん✨ あ! じゃあさ! 名前つけようよ!」  「名前?」  「うん✨ 名前! 私達のグループ名みたいなさ!」  「それいい! 優夏が決めて!」  「じゃあね〜✨ 真夏のガールズ! 二人の名前にも夏が入ってるし!」  「いいっ!! かわいいね!! 決定っ!!」  「よしっ! じゃあ私らは真夏のガールズだ!」  「うんっ! 真夏のガールズっ!!」  真夏のガールズ……。いい響きだ✨  私は一人、ほくそ笑んだ。  これから先の未来は必ず明るくなる。そんな気がしたから。    ダサいスク水。  ぬるくなったメロンソーダ。  何でもない物も、私達には彩りを与えてくれる。優夏との日々を楽しもう。思う存分。      私達、「真夏のガールズ」は永遠に不滅だっ!
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