好きだよ。

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 紫はずっとああして、生きていくんだろう。自分がどれだけ人を傷つけるか、知りもせず……。  それは許し難かった。紫は、紫の為にもそれをわかるべきだった。  皆で、紫の無視をした。 「うっざ」  ある時は、紫が通り過ぎると、口々にささやいた。それについては、どうかとも思ったけど、止めきれなかった。紫は傷つかなくてはならない。  友達の一人が紫の足をひっかける。転んだ紫を、笑った。 「ほんとじゃまだよね」 「消えてほしい」  紫は、何も言わず、起きあがって、スカートを払った。そしてくるりと振り返り、 「なんかごめんなさい」  と言って去っていった。  頭にかっと血が上った。 「なにあれ」 「まじ頭おかしいんじゃないの」  友達の顔も赤い。 「こえー」 「桑原さんも災難だな」  クラスの男子が、ささやいていた。  何もわかってないと思った。本当に人を傷つけているのは、紫の方なのに。  私達が、どれだけ攻撃しても、紫は終始無関心だった。  私達は止まれなくなっていたけど、空回りする自転車みたいに、空虚で……だから、クラスが変わって、紫と離れると、皆どこかほっとしていた。  でも、私はまだ忘れられなかった。  だって、私が見ていないと、紫はまた誰かを傷つけるから。だから、どれだけ傷ついても、やめるわけにはいかなかったのに。  でも、本心ではもう疲れ切っていた。もう戦うのはやめたかった。相反する気持ちに、いつも私は宙ぶらりんだった。  廊下で紫とすれ違う。そのたびに、私は悔しくて、悲しかった。  でも、もうだんだん怒ることはできなくなっていた。悲しいことに、物理的な距離は私を救っていた。  私はずっと、紫にできる限り、不幸になってほしかった。でも、思い知ってほしいだけだから、取り返しはつく程度で……  私は、紫にただ、わかってほしかったのだ。
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