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紫は、栄太と付き合うことに決めたようだった。
「お前、何泣いてんだよ」
「うるさい、だって嬉しいんだもん」
私はうそをついて、ひたすら泣いた。思いを殺して、笑うことにもなれてしまっていた。私の祝福を、紫はすこし目を細めてみていた。
「決め手ってなんだったの」
「んー……」
二人きりになって、私は紫の手を握り尋ねた。紫は、まったくいつもどおりだった。彼氏ができて、好きな人と結ばれて喜んでいる顔じゃなかった。
「まあ、付き合ってみるのもいいかなって」
「……そうなんだ」
紫は最後まで、気づいてくれなかった。
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