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「ごめんね。でも、それは」
これに続く言葉を私は知っている。
「君が怪物だから、化物だからじゃないの? 僕は忘れてしまっていたけれど、本当は友樹はもう死んでしまっていたんじゃないの?」
思わずため息をつく。似ている似ていると思っていたが、決意を固めたときの表情は本当にそっくりだ。諦めを覚えながら最後の反論をする。
「どういうことだ? さっきから話を聞いている限り疑われることはないと思うけど」
「だからさ、さっき僕はズレがなくなったのは裕太が死んだあとって言ったでしょ? あれ、もっと詳しく言うとおじいちゃんの家に知らせに走ってるときだったんだよね。裕太が死んだのはもっと前でしょ。僕、裕太が死んだところを見てたんだから。いくらバカでも背骨と首があんなふうに曲がって内臓が飛び出てたら死んでるって分かるよ。怪物が化けたタイミングは、だからもっとあとのはずなんだ。あとさ、友樹は怪物に立ち向かっていったよね。なのに何であんなに軽傷だったのかな。普通なら大怪我をするはずなのに。それは、君が」
「わかったよ」
思わず大輝の言葉を遮る。今ならあのときの自分の失敗が分かる。本当に馬鹿だった。
「わかったよ、話す。そうだよ、お前の言う通り俺が――私が怪物だよ。あなたのおばあちゃんも友樹くんも裕太くんも殺した」
もう一度ため息をつく。どちらにしろこうなっていた。きっかけがどうであれ、こうなっていただろう。
「何で!」
悲鳴のような声で大輝が叫ぶ。
「友達だったんだ、あいつらは! ずっと僕を助けてくれた。喧嘩を止めることもあった。喧嘩をしたこともあった。それでも、あいつらはいっしょにいようっていってくれたのに! お前は人じゃないから、わからないんだろ! どれだけ大切だったかわからないんだろ!」
思わず言い返す。
「だまれ! お前にはわからない! 私の気持ちも、罪の重さも!」
それからはっとする。熱くなりすぎた。
「わかりたくもない! お前の罪が重いんなら、どれだけ重いのか教えろ。どうせお前は理解していない!」
大輝が私に叫ぶ。自分の罪を私は嫌というほどわかっている。正直逃げ出したいけれど、それは許されない。
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