化物の懺悔

3/4
前へ
/8ページ
次へ
「語れというのなら語るよ。私があなたの友達と祖母を殺した理由を。長くなるな。……まず、私の正体から話すよ。私は神使。日本で言う神使とはまたちょっと意味が違うんだけど、まあ神様の下働きみたいなものだと思ってほしい。それでも一応神様ってことになってて、死ぬことはない……ってことになってる。それで、私の担当の神様は肥曇那神というかたで、毎年守っている村から一人生贄をもらっていた。そこで、私は天津という少年に会った。彼は優しくて、律儀だった。生贄に選ばれた者と代わろうとしたから。まあ許されるわけもなく生贄として死ぬことはなかった。その子は死んだあと神様になった。まあこれ自体は特別なことじゃないんだけど、その子は特別高い地位についたんだ。私がどれだけ頑張ろうと届かないくらいのね。その後、まあ色々あって私達は恋仲になった。ここらへんの話はあなたは興味がないだろうし聞きたくもないだろうから、省くよ。それでまあ仲良くやってたんだけど、その人は周りの神様方から好かれていた。当然女神様方も。それで、私みたいな位の低いものには釣り合わないと言われて、濡れ衣を着せられた。それぞれの事件自体は些細なことだったけれど、積み重なって罪が重くなった。私に対する罰は、神の位を剥奪して殺すこと。神は殺せないから。でも、その罪を私の恋人は私の代わりに背負った。私が逃げようって言っても変なところで律儀で、結局殺されてしまった。でも、それで私の罪が消えたわけじゃなくて軽くなっただけだったから、私は松瀬川の門番に落とされた。松瀬川は暇なところだよ。近所の人が亡くなった魂は大体松瀬川に行くんだけど、最近は病院でなくなる人が多いから私は儀式を行った人だけを殺していた。やりたくてやってたわけじゃない。罪にも重さ軽さがあって、一定の期間を過ぎれば私は元の位――とは言わないまでも、戻れる事になっている。恋人の罪は重かったけど、神としては素晴らしかったから誰かが頑張って進言すれば戻せるのかもしれなかった。殺されているから、もし戻ってきたとしても元どおりにはならないけれど、私はそれでもあの人にもう一度会いたかった。だから頑張っていたんだけど、ある日高位の神様から私を元の位かそれ以上のところにしてやってもいいと言われた。思わず耳を疑ったよ。そんな私に、その神様は機会をやると言ってきた。神様は私が選んだ人間を殺し、その殺した相手に化けて人間の寿命が終わるタイミングで誰にも化けたことを知られていなければ戻してやると言った。何でそんなことをしなければ戻れないんだ、と思ったし直接聞きもした。そしたら、『楽しいからね。それにもともと因果律がこうなっていたよ』と言われたんだ。当然苛立ったよ。でも、あの人を助けることができるのはこれくらいの方法しかない。いくら神様が不死だからといって、いつまでも助けることが可能な状況が続くとは限らない。私は結局、人間を殺す罪を選んだ。私の勝手なエゴであなたの祖母を殺した。本当ならそれで終わりで、それ以上誰も死なないはずだった。でも、あの時私があなたの祖母を殺すところをあなたは見ていた。私が人に化けるにも制約があって、殺したところを見られたらその人の記憶に残ってしまう。あなたは幼かったから、誰かに話しても信じてもらえず記憶の中で小さなズレとして残ったんだと思う。だから、私はあなたを殺して誰にも知られていない状態にしなければいけなかった。一番ちょうどいいタイミングはあなた達が肝試しをしに来たときだった。でも、あなた達三人はいつも一緒に居ただろう? だからあなたの気配と裕太の気配を間違えた。そこで裕太を殺してしまったあと、自分の失敗を理解した。でも裕太に化けることは出来ない。あなたに見られているから、そのままでは堂々巡りになってしまう。だから、友樹を殺して友樹に化けた。あなたの祖父が来る前に殺さなければならないから大変だったよ。しかも殺したあと食べなければならないときている。」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加