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血を吸う鬼2
それから随分と時間は経過し優也が再び目覚める頃には太陽はすでに活動を終えていた。最初は寝落ちから目を覚ましたような感覚だったが、徐々に何があったかを思い出していく。そしてまだ目覚めきっていない頭を持ち上げながら起き上がり横を見るがそこには居たはずの女性が居なかった。
「おっ。起きたか」
首を傾げているとベッド脇から聞こえた声へ視線を向ける。そこにはサイズの合っていない白シャツがワンピースのようになっている女性が立っていた。
女性はスッキリとした表情で気持ちよさそうに伸びをしておりその後、優也の方を見て指差す。
「お前、寒くないのか?」
そう言われると忘れたと言わんばかりに寒気が襲ってきた。それに気が付き思わず身震いをする。そして鳥肌の立った自分の体に目をやるとボクサーパンツしか身に着けておらず、ほぼ裸同然の格好に驚くというよりは疑問が浮かんだ。
「なんで僕こんな格好で寝てるの?」
「そりゃ、俺が昨日脱がしてやったからだよ」
さらっと返ってきた答えに疑問は愕然へと変わる。だが更なる疑問が驚きの後ろに列を成していた。
「ぬが? えぇ!」
「お前の服、汚かったからな。あっ、この服借りてるぞー」
「あっどうぞ。……じゃなくて! 聞きたいことが山ほどあるんだけど!」
「へいへい。分かったから、とりあえず服着ろよ」
流すように言った女性は寝室を出て行った。
残された優也はベッドから出るとまず服を着るためクローゼットに向かう。開けっ放しにされたクローゼットの下には、確かに脱ぎ捨てられた二人分の服が。とりあえず適当に着たあと落ちていた服を拾い上げた。それはボロボロのスーツや所々に血の滲んだインナー、砂埃で汚れたスキニー。
「高そうなレザージャケットなのにもったいないなぁ。僕のスーツも、もう使い物にならないか」
スーツを片手に自然と溜息が口から零れてしまう。だがとりあえず散らばった衣類を拾うと近くにまとめて置いておき後で片付けようと心に決めた。
そして寝室から出ると先ほどの女性はソファの上で胡坐をかいて座っていた。そんな女性を一見しカウンターキッチンへと向かう。
「君も何か飲む?」
「おん」
気の抜けた返事を聞くと二人分のカップを出しココアを入れた。
そして湯気の立ち上るカップを女性の前に置き自分のは持ったまま向かいのソファに腰を下ろす。
「それじゃあ色々と聞く前に……。まず僕は六条優也、よろしく」
名前だけの簡単な自己紹介をした優也は握手の為に手を差し出す。その差し出された手をすぐには握り返さず見つめる女性。
優也は中々返って来ない自己紹介に首を傾げる。
「君は?」
「俺の名前は……」
言いたくないのか言葉に詰まる。しかし優也は急かすことなく手を差し出したまま女性からの言葉を待つ。言いたくなければ無理聞く必要はないと思っていた。
だが開かれた口から出てきたのは意外な言葉だった。
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