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裏舞台2
そして沈黙の中じっと目を見つめるマーリンはわざとなのか不気味さを帯びた微笑みを浮かべている。優也はその雰囲気に呑まれ緊張気味だった。
「正解」
だはそう言うと同時に先ほどまでの微笑みはすっかり消え、打って変わりニッコリとした優しくも可愛らしい笑顔へと変わった。
「どうして分かったのかな?」
「その帽子が魔女っぽかったからですかね。あと、格好とか」
彼女の被っていた大きなとんがり帽子を指差しながら説明した。
それに対してマーリンは満足そうに何度か頷く。
「そうよね。あなたたち人間の魔女へのイメージはこうだからね。被ってきて良かったわ」
そう言いながらとんがり帽子を頭から外し少し眺めた後に真上へ投げ捨てると、一瞬で煙となり消えて無くなった。だが先程目の前で人が瞬間移動したのを見た優也にとって今更帽子が消えることはインパクトに欠け内心で「おっ!」と思っただけだった。
「でも、いきなりアタシは魔女でこの子は吸血鬼ですって言われても信じられないわよね」
「正直に言うとそうですね」
「でも、これは君の種族が人間であるようにアタシは魔女、この子は吸血鬼って言う単純な話しよ」
だが例え単純だとしてもそう簡単に受け入れられる話ではなく、それ故に優也は何も言うことが出来ずにいた。そんな彼の目を見たマーリンは何を言いたいのかを察した様子だった。
「魔女や吸血鬼なんて御伽噺の世界にしかいるはずがない」
また思っていたことを的確に当てられた優也は思わず感情を漏らす。今の彼の表情を見れば多くの人が言葉など無くともその心中が読み取れるほどに。
「まぁ、普通に生きていればアタシたちと人間が関わることはまず無いから仕方ないわね」
「ということは少なからず関わっている人間がいるってことですか?」
「少なからずね」
すると優也はマーリンが脚を組み直したことで彼女がブーツを履いていることにやっと気が付いた。
「あの、それ脱いでもらっていいですか? 土足で上がられるのはちょっと」
「あら。ごめんなさい。もっと早く言ってくれたらよかったのに」
言われた通りブーツを脱ぎ捨てると帽子同様に煙となって消える。ここまできたら優也も慣れたものでそれが当たり前であるかのように特に反応はしなかった。
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