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裏舞台3
「さて、こころからが本題よ。なぜ犬族に襲われていたのかについてね」
「種族間の問題とかそういうことですか?」
「種族間というよりはこちら側全体の問題ね」
「こちら側……ですか」
「そう。あなたたち人間を表舞台と例えるのならこちら側は裏舞台。以前はアタシたち側にも裏舞台のまとめ役がいたんだけどね。簡単に言うなら王。だけど王って言っても代々受け継がれてきたような存在じゃないんだけど。まぁその王をしてたのが……」
言葉を止めたマーリンは顔を横に向け隣で船を漕ぐノアの方を見た。優也の目もその視線を追う。
「吸血鬼ですか」
「えぇ。ちなみに王をしてたっていうのはこの子の父親ね」
「ということは、王女様!?」
ノアを指差し目を瞠りながら少し大きめの声が出る。それは彼女が優也の想像する王女様像とはかけ離れていたからだった。
「王女ではないと思うけど」
「でも、なら早く家族のところに帰してあげたほうがいいんじゃ……」
「家族ねー」
するとその言葉にマーリンはどこか哀愁漂う笑みを浮かべた。
「吸血鬼一族はもうこの子だけよ」
「え?」
「元々数の少ない種族だったんだけどあるヤツに狩られてしまったの……」
「それって僕たちが色んな国に分かれてるようにいろんな勢力があってその争いに負けたってことですか?」
「少し似てるわね。だけどこれはこの国に住む者の問題。海の向こう側にもアタシたちのような存在はいると思うけど、今回の件に関しての関わりは一切無いわ。恐らくだけどね。まぁ今回のことを分かりやすく言うとすればクーデター。ってところかしら」
「王様である吸血鬼を良く思ってない者たちがいたってことですね」
優也は軽く頷きながら自分で呟くように言った理由に納得していた。それは彼女が言い表した表舞台でも起きたことがある事で、実際にそのクーデターにより指導者が変ったというニュースを優也も目にしたことがあったからだ。
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