11人が本棚に入れています
本棚に追加
/424ページ
【6滴】忍び寄る影
朝、優也を起こしたのは目覚ましでも太陽の光でもなく電話の着信音だった。まだ少ししか開かない瞼とぼやけた視界の中、スマホを手探りで探す。見つけると相手が誰なのかを確認せずに電話に出た。
「もしもし?」
「もしもし? じゃねーわ! 今どこだよ?」
電話の向こうからは昔からの良き親友である犬崎 真守の聞き取りやすく焦り気味の声が聞こえてきた。
「どこって、家だけど?」
「家ってお前……」
その一言は呆れて言葉も出ないと言った様子だった。
「会議まで時間無いぞ」
「え? 会議? ……」
最初は何のことだか分からなかったがこの日、会社で重要な会議があることを思い出した。そのことを思い出した瞬間、一気に焦りが心を満たし、心臓の速度を上げると眠気を追い払いながら体をすぐにでも動けるようにした。
「あっ! やばっ!! 今すぐ行く!」
「早くしろよ。今だったらまだ間に合うから」
「分かった! 真守ありがとう」
「おう」
電話を終えベッドから飛び起き大急ぎで準備を済ませた優也は、大慌てで家を出発。そんな慌しい優也を送り出した後、家は廃墟のように静まり返った。
最初のコメントを投稿しよう!