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忍び寄る影2
大きな窓から夕陽が差し込む時間帯。ソファに寝転がるノアの顔は夕焼け色に染まっていた。彼女は肘置きを枕代わりにし、反対の肘置きへ組んだ足を乗せている。
すると天井を眺めぼーっとしているノアの顔先に突然、マーリンの顔が現れた。
「暇そうね」
だが突然現れたマーリンに対して一切心の乱れはなく平常心そのもので彼女の顔を見るノア。
「全く、面白味が無いわね」
驚くことを期待していたのか顔を上げたマーリンは彼女の反応に対して不満げな表情を浮かべていた。
「驚かすセンスが無いんじゃねーのか?」
「失礼ね」
返事をする頃には、マーリンはいつの間にか向かいのソファへ移動していた。それを見たノアも起き上がり胡坐をかく。
「それで? 何しに来たんだ?」
「あら、まるであなたの家みたいな言い方ね」
「じゃあ、あいつに会いに来たのか?」
「それも理由のひとつね。あの少年可愛いから」
そう言うと心を弾ませたような笑顔を浮かべた。だがその笑みにはどこかいたずらっ子が紛れ込んでいるようにも感じる。
「そーかよ」
「大丈夫。ちゃんとあなたへの用事もあるわよ。そう拗ねないの」
「拗ねてねーよ。で? 用事ってーのは? あいつの居場所でも分かったのか?」
「それはまだよ」
マーリンはゆっくり顔を横に振る。その表情は落胆としていて、進展すら無いのか落ち込んでいるようにも見えた。
「だけど、必ず見つけるわ。その時はしっかり働いてもらうわよ」
「あぁ。契約の役目はしっかり果たさせてもらう」
そう言うとノアは心臓に胸越しで手を添える。その向こう側で脈打つ心臓には奇妙な文字が書かれた銃弾が埋まっていた。
だが血が漏れ出している様子はなく今のところ害はない様子。
「あなたには頑張ってもらわないと目覚めさせた意味がないわ」
「全力は尽くすさ」
「アタシもできる限りのことはするわ。まぁそれは置いといて、今日来たのはあることを伝えるためよ」
「何だよ?」
マーリンは焦らすように一瞬だけ間を置いてその伝えに来たことを話し始めた。
「オーク族が動き出したわ」
「あのでけーやつらか。じゃあ、ここを離れねーと迷惑になっちまうな」
「その心配はいらないわよ」
「どういうことだ?」
首を傾げるノアには彼女の言葉の意味が見当すらついていなかった。
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