忍び寄る影3

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忍び寄る影3

「あいつらが狙ってるのは六条優也。あの少年よ」 「は? あいつは人間だぞ! 関係ないだろ!」  小さな爆発を起こした怒りと共に思わずテーブルを叩き身を乗り出すノア。彼女自身マーリンに怒りをぶつけても意味ないことは分かっていたが感情素直に行動してしまった。 「彼らに言わせればそんなの関係ないってことよ。重要なのはあの少年があなたの兵隊になりうるってこと」 「兵隊って……俺はそんなの作る気はねーよ。まぁ、ちょっとは出来るやつだと思ってたたけどよ」 「思ってるじゃない」 「とにかく、俺は兵隊なんてもんはいらねー。それで? いつ来る?」 「そうねー。あの一族の性格からして今日決行するんじゃないかしら。予測が正しければそろそろ動き出してると思うわよ」  それを聞いたノアは勢い良く立ち上がりドアへ歩き出す。  そんな彼女をマーリンは呼びとめ、紙袋を投げて渡した。受け取った瞬間、その紙袋は消えて無くなり煙が瞬く間にノアを包み込む。その煙が晴れると服装は黒いスキニーパンツに黒のレザージャケットとジップパーカー、黒い薄手インナー姿へと変わっていた。 「その格好好きでしょ」 「さんきゅー。んじゃ、行って来る」  マーリンは力無い手を軽く上げて振りドアに歩き出すノアを見送った。フローリングを走る音は徐々に遠のいていきドアの閉まる音が家に響くと入れ替わるように静けさが代わりにやってきた。 「そう数は来ないだろうし、オークぐらいならあの子だけでも楽勝ね。――アモ。紅茶もらえるかしら」 「かしこまりました」  いつからそこにいたのかソファの後ろに立つアモは、キッチンに向かうとお湯を沸かし始めた。
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