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忍び寄る影4
一方、会議にはギリギリ間に合いその日の仕事を早めに終わらせた優也は帰路に就いていた。帰宅する為に道を歩いていた優也だったが、突然伸びてきた手に路地へと攫われる。口を覆う右手の所為で必死に上げる声は外界に出られず、体の自由を奪う左手の所為で身動きがとれずにいた。
「んー! んー!」
「あーもう。うるせーな!」
だがその聞き覚えある声に優也は少し落ち着きを取り戻した。そして顔を動かし自分を拘束している人物を見上げる。それは周りを警戒するノアだった。
「んー。んんー。んんんんん?」
「大声出すなよ」
「ん」
その言葉に頷くと両手から解放された。やっと自由になれた優也は彼女の方を向きとりあえず聞きたいことがあった。
「なに? 急になに?」
「説明は後だ。とりあえず行くぞ」
だがその答えをくれないだけでなく返事も聞かず、彼女はさっさと歩き出だしてしまった。
「ちょっと待ってよ」
訳は分からないままだったが仕方なくその後を追う優也。
そしてしばらく彼女について行くと、少し開け三方を壁に囲まれた行き止りに出た。立ち止まったノアは辺りをキョロキョロとしている。
そんな彼女を後ろから覗き込むように見る優也はど訝しげな視線を向けていた。
「ねー。迷ってないよね?」
「……」
「……おーい?」
「あーもう、迷ってねーよ」
するとノアは(図星だったのか)苛立ちを露わにした声を上げながら後ろを振り返った。
「説明してやるから黙ってついて来いよ」
「まぁ説明は聞きたいかな」
「まず簡単に言うとだな……」
望み通り説明を始めた直後、彼女の後ろに何か大きなモノが降ってきた。
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