忍び寄る影5

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忍び寄る影5

 それが地面と接触すると衝撃音が空気を揺らし、砂埃が一斉に舞い上がった。煙幕のような砂埃の所為で視界は最悪。  だがその中に薄っすらと巨大な影が見えたかと思うと、上半身だけで振り返ったノアは横へと吹き飛ばされた。目の前に居たはず突如ノアが消え、固まる優也は恐怖というより何が起こったか分からず唖然としていた。  その間にも砂埃が徐々に晴れていき中からは、優也の何十倍もあるであろう巨体が姿を現す。それは鎧のように硬そうな苔色の肌で口には角が如く伸びる立派な牙とビール腹のように出た丸いお腹のオークだった。ふんどしに似たものを腰に締めているだけでその他は何も身に纏っていない。そして右手にはその巨体に見合う程の手斧を握っていた。  そんなオークと目が合った優也は今度こそ恐怖に支配され声も出せぬまま腰を抜かしてしまう。まさに蛇に睨まれた蛙のようになっていた彼をオークは特に何をするわけでもなく黙って観察し始めた。 「相変わらず人間っでーのは貧弱で弱ぞうだ。ごんなのに何の脅威を感じだんだが不思議でじょうがねぇぜ」  オークは低く濁った声でそう呟くと怯える優也へ向け歩みを進め始めた。
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