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小さな運命の歯車2
だがそんなことより重要なのは優也が一人暮らしだということ。当然ながら家に他の人が居るはずもなくましてやベランダで誰かが座り込んでいるなど想像すらしたことのない出来事だった。
そして現状を一つ一つ改めて理解していくうちに段々とこれが異常でありえないと言うことに気が付き始めた。その所為かハッキリと見えているにも関わらず見間違いだと言い聞かせた優也は人影を数秒見た後、一度顔を逸らしてみる。この時、幽霊という単語が思い浮かんだがそれは怖すぎると無理やり頭の隅に追いやった。
そして一度逸らした視線を再び戻すが彼の双眸には同じ光景が映し出されていた。しかしまだ信じきれない優也は次に右頬を摘みゆっくり捻ってみる。
「いっつっ!」
痛みを感じたことでようやく現実だと認めた。というよりは認めざるを得なかった。
そして恐々としながら窓を開けしゃがむと肩へ手を伸ばしてみる。指先がジャケットに触れその感覚が伝わると少し手を引いてしまったが、すぐに肩を掴み軽く揺らしながら声をかけた。
そんな行動を取りながら優也は意外にも終始冷静な自分に内心驚いていた。それは異常な現状ではあったが不思議と目の前の人物から恐怖の類を感じなかったというのもあるのだろう。
「あのー、すみません。あのー」
だが返事がない。どうしようかと考えながら一旦手を離した優也だったが、引いた手と一緒に女性は人形のように一切抵抗せず倒れ、彼はその体を慌てて受け止めた。この時、中からの光に顔が初めてハッキリと照らされた。黒いショートヘアに透明感のある健康的な肌、両耳では十字架のピアスが揺れている。
そんな女性のクールな雰囲気の顔に赤色の液体が付いていることに気が付いた優也。
そしてふと、先ほど彼女の手が添えてあった脇腹に目をやった。無意識なその行動に意味なんてない。
だがその視線の先にあったのは、先程まで添えられていた手が(倒れる時に)ずり落ち露わになっていたその下に隠れていた血。それは普段見るこのない量の血だった。
しかもよく見てみると未だに彼女の体から血は流れ出し下の方には血だまりが出来ていた。インナーは傷口ができた時に破けたであろう部分を中心に血が滲んでいる。
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