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相手と自分それだけ3
だが現実にポーズ機能はなく起きた事実に思考が捕まっている間にも時間は進む。オークを転ばせたノアは大きく跳躍すると、手を貫手のように構え心臓へと狙いを定めながら落ちてきた。重力の助けも借りつける勢い。
一方、何とかリアルタイムに思考が追い付いたのかオークは手斧を胸の前で構え間一髪防ぐ。なんとか胸に穴を空けずにすんだ。
そしてそのまま鍔迫り合いのようになったノアを押し返し、後転しながら態勢を立て直す。片膝を地面につけたオークは自分が始めに飛ばされた壁を背負っていた。
すると、オークはなぜか手斧を地面に突き刺す。
「思っだよりもやるな。だげど、しょぜんおめぇは過去の一族。吸血鬼が最強だっだのも昔の話だ。ぞれに加え、のごる吸血鬼はおめぇだげ。おめぇらの時代はもう終わっだんだよ!」
状況だけ見れば押されているのはオーク。だが秘策でもあるのかは定かではないが、随分と強気だった。
そんなオークは落ちていた自分の腕(最初に無くした右腕)を掴むとノアに向けノーモーションで投げ飛ばした。その直後に手斧を地面から抜き走り出す。
だがノアは腕を組み避けようともせず動かない。
そして真っすぐ飛んで来た大きな腕が当たる寸前になると片手で弾き返した。しかし弾き返された腕など関係なしにそれごと陰のノアを真っ二つにしようと手斧が振り下ろされる。
分厚い腕を気持ちよく切った手斧は勢いそのまま振り下ろされていくが、直撃とはいかずノアの袖を掠め地面に食い込んだ。そのギリギリの攻撃に対しても全く動じていないノアは、オークの目を見据えながら腰辺りの高さにある峰にそっと右手を乗せた。オークはそれを目にし手斧を引き抜こうとするがどれだけ力を入れてもビクともしない。それはまるで手斧が地面と一体化しているのではないかと思わせるほどだった。
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