12人が本棚に入れています
本棚に追加
相手と自分それだけ4
「全く、どいつもコイツも……」
溜息交じりの声で呟きながら視線は逸らさず手は乗せたままオークに向かって歩き出すノア。
「過去の一族だの、落ちた一族だの。色々言ってくれるじゃねーか。まぁでも、時代は変わり吸血鬼がやられたのは事実だ。何を言っても構わねー」
右手が刃を過ぎると手斧を押さえたまま左手で柄を掴むオークの手首を軽く握った。そして徐々に力を入れていく。それと同時にノアの心に感情の炎が灯り始めた。
「それに、元々落ちるようなところに居ない雑魚のお前らがいくら煽り文句を言ったとこで何とも思わねーよ。所詮は負け犬の遠吠えだ」
そう話すノアの表情には笑みが浮かんでいたが、笑みは笑みでも相手を見下ろす嘲笑。
そして手首を握る力が更に強まると爪が食い込み骨が軋み出す。あまりの痛みに耐えられなくなったオークが柄を離すと、同時にノアも手を離した。その後、オークの手が離れたことで持ち主の居なくなった手斧をノアは地面から軽々と引き抜き担ぎ上げる。
激しく燃え上がってはいないものの、触れるモノを焼き尽くす確かな熱さを備えた炎はゆらゆらと彼女の中で踊るように燃えていた。
「最後にひとつ言うとすれば……いくら時代が変わって吸血鬼がオークより劣ったとしても……」
手斧を両手で持ち真上へ跳んだ事でノアとオークとの目線は丁度同じ高さへ。互いの双眸は対等に見合っていた。
「俺がお前に負ける理由にはなんねーよ」
そう言って首目掛け手斧を振った。手斧はつっかえること無く綺麗な断面を作り頭部を胴体から切り離した。切られた直後一瞬、宙に浮いているようにも見えた首だったがすぐさま重力に引かれ地面へと落下。
そして頭より少し遅れて地面に降りたノアは、噴水の如く血を噴き出し倒れていく巨体を背に血の滴る手斧を担いだまま優也の元へと戻った。
最初のコメントを投稿しよう!