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【2滴】血の眷属
もう追ってきた自らを犬族と呼ぶ人型の犬。犬族は手に持っている丸い機械を軽く上に投げては掴みを繰り返していた。
だが女性は犬族を無視し両腕に力を入れ、体を縛るモノを引き千切ろうとするがビクともしない。
それを見ていた犬族は手を止めるとニヤリと笑った。
「そこまで消費した貴様じゃどうしようもないだろ! わん」
その挑発的な声に女性はやっと顔を上げると犬族へ目をやりながら口を開いた。
「チッ。大体お前ら多すぎなんだよ。百一匹ってどういうことだよ! 百一対一だぞ!」
初めて口を開いた女性の声は、口調も相俟ってか男勝りであろうその性格をよく表していた。そして言わずもがな苛立っていた。
「今は亡きその百にきの同胞のおかげでお前を捕らえることができたわん」
犬族はその同胞を思い出し感傷に浸っているのか遠くを見つめた双眸で空を見上げた。
その後、視線は優也の方へと向く。
「その哀れな人間を殺してさっさと連れて帰るわん」
するとこの言葉を聞いた女性も優也の方を見た。
「お前人間だったのか……」
「そう、だけど……」
ただ一人、状況についていけないまま優也がそう答えると女性の口角が上がった。どうやら優也が人間であることは都合が良いらしい。
「いやー、俺も運がいいなぁ」
「ん? 追い込まれてついにおかしくなったか? わん」
女性の頭にはこの状況の打開策が思い浮かんだようだった。
だが自分の勝利を信じて疑っていない様子の犬族はそうとは受け取らなかったらしい。
「おい、犬っころ! 良かったな。また百匹の同胞とやらに会えるぜ」
それを聞いた犬族は目を片手で覆うと天を仰ぎ大声で笑った。女性の気が狂ったか適当なことを言っていると思ったのだろうか。どちらにしろ犬族が女性を嘲笑っていることは確実だった。
「今更お前に何ができるって言うわん」
「俺じゃねーよ」
「まさか! 助けでも呼んだのか? わん」
一瞬にして一驚した犬族からは先ほどまでの余裕は感じられない。
「んな訳ねーだろ。つーかどーやって呼ぶんだよ」
呆れた様子で否定する女性の態度は捕まっている者とは思えなかったが、それ程にその打開策とやらに自信があるのだろう。
一方、犬族は否定されたことで先ほどの感情は溶け去ったのか今は彼女へ詮索するような目を向けていた。
「じゃあ、誰のこと言ってるんだ? わん」
「ほら、居んじゃねーか。こんな近くにお前を倒すヤツが……」
女性はその人物を顎でしゃくった。それに導かれた犬族の視線はその人物へ向く。
そして優也は隣の女性を見た後に犬族の方を見ると目が合った。
「えっ? えぇぇぇ!」
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