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血の眷属3
「(なんだこれ。血の味?)」
そんなことを考えている間に唇を離した女性は塔屋の上へ一っ飛びで登ると縁に腰を下ろした。そして宙に放り出した脚を組み高みの見物といった雰囲気。
一方、優也は眠りに落ちるように意識が段々と薄れていくのを感じながら最後は力なく俯いた。
「後は頼んだぜ人間。いや、今は人間じゃねーか。眷属ちゃんよ」
すると優也は俯いたまま体を拘束するモノをいとも簡単に引き千切り、そして立ち上がった。意識は無くまるで催眠術にかかったような状態のまま佇む優也。
そんな優也へ訝し気な視線を送っていた犬族だったが、唐突にその表情は一変。かと思うと冷や汗を流し始めた。ついさっきまでの怒りは一瞬で冷めその表情はどこか怯えている。
だが一方で女性は首を傾げていた。
「これはやりすぎちまったな。量間違えたか? ちょっとだったはずだけどな」
そんな女性を他所に俯いていた優也がゆっくりと顔を上げ始めた。
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