エピローグ

2/2
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/138ページ
「……かつき君の、馬鹿っ」 「は? 馬鹿? 俺、自信もってバカっすけど」 「そこまで想ってくれているのに、わたしの気持をちゃんとわかっていないのが馬鹿」 「……」 「わたしだって、ちゃんと答えを準備してるんだよ?」 「みずほ先輩の、答え?」 「きみが、あててみてよ」 神妙な雰囲気をダダ漏れさせてうつむくみずほ先輩の姿に、これはただごとではないのだと俺は感づいた。 そうなると、お門違いの答えで、みずほ先輩を落胆させるわけにはいかない。 だから意地でもみずほ先輩の答えを見つけ出すんだ! そして、俺はこの馬鹿な頭で考えて考えて考え抜いて――ついに、みずほ先輩の答えにたどり着いた。 俺は今ここでみずほ先輩にその答えを伝えなければならない。 下僕ではなく、男として覚悟を決めて口を開いた。 「……あの、俺でいいっすか?」 「あっ、うん。はい」 みずほ先輩は頬を紅に染めて細い首をこくりと曲げる。 「即答っすか」 「うるさいっ! っていうかいまさらすぎよ!」 みずほ先輩はすっくと立ち上がると、上履きを脱いで手に持ち振りかざす。 「覚悟しなさい、この勘違いさせバカイケメン男があああ‼」 その上履きを、俺に向かって力の限りぶん投げる。至近距離で顔面を直撃した。 「ぶへえっ!」 衝撃でのけぞり、俺は椅子をひっくり返して床に伏した。 見上げると生徒会室のカーテンが風にはためいていて、窓の向こうには澄んだ青空が広がっていた。 もうすぐ開花しそうな桜の木が目に映る。 これからきっと、春真っ盛り。 いや、俺はとっくに、その季節のど真ん中にいたらしい。 【了】
/138ページ

最初のコメントを投稿しよう!