第一章・ーツンデレ刑事と女王様ー

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「今日はほんまに、たまたま非番やったさかいな。ほんで丁度暇しとったから、大丈夫やで」  オフィーリアが暇を持て余すとかは、普段の様子を知っていればあり得ない事なのだが、アニーにはそれが遠慮をさせない嘘だと理解出来たので、苦笑しながらも素直に頷く。 「うん。ありがとう。それじゃあ、プランナーさんを待たせているし、もう行こう。お兄ちゃん」  というアニーの苦笑いを前に、オフィーリアも少なからず自覚していた。  我ながら見え透いた嘘を吐いたものだ、とーー。  本当ならば非番の日こそ物凄く忙しいのを知っているアニーだからこそ、敢えてスルーしてくれたのだと理解して、長い息を吐く。  噴水広場からすぐ近くの式場は、かなり大きな施設となっていて、ここでは結婚式のみならず、それに伴う相談や打ち合わせも可能なのである。  専門のプランナーが常駐しているらしく、着いてすぐ中へと案内されたオフィーリアは、煌びやかな内装をさりげなく観察しながら歩いている。  周りは当然の事ながら、幸せそうな表情と雰囲気に満ちているカップルばかりだ。  腕を組んだり密着したりと、まぁこれから結婚するのだから今が一番幸せなのかと、どうしても、どこか冷めた目で見てしまう。 「お兄ちゃん、こっちだよ」 「ほ……、アニー」 「ん? 何お兄ちゃん?」  普段通り呼ぼうとして、場所柄を考えてわざわざ名前に変えると、超絶無邪気な笑顔で返される。 「あんな。取り敢えず、この場所で“お兄ちゃん”呼びは、止めよか」 「……あ。えと。うん。ごめんなさい」  それだけでオフィーリアが言わんとする事を理解したのか、慌てた様子で口を塞ぐと、一度深呼吸してから再びにっこり笑う。
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