第一章・ーツンデレ刑事と女王様ー

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「少々申し遅れました。(わたくし)、こういう者です」 「あ? あぁ。えぇと」  名刺を渡され見ると、そこには肩書きと名前、結婚式場の連絡先が記されている。  プランナーのお姉さんこと、ミリシャは相変わらずにこやかだ。  笑顔で返しながら、オフィーリアはしばし迷う。彼とてきちんとした名刺は常に持ち歩いてはいるのだが、果たしてこの場で「こういう者です」とかのたまいながら渡して良いものなのか、とーー。  あくまでも今日は代理の身。  それなのに平然とパートナーとして名刺を渡すのはどうなのか。  しかも、こうしてナチュラルに対面しているにも関わらず、オフィーリアの容姿に何の疑問も抱かないという事は、今日がアニーのパートナーというポジションなる相手と、初対面であるのに他ならない。  ちらりとアニーに視線をやるが、今日が打ち合わせ初日だとは聞いていなかった上、ミリシャはオフィーリアにターゲットを絞って名刺を寄越してきた。  ……という事は、アンダーテイカーはいまだ一度もこの場には足を運んでいない、という事実があるのに他ならないだろう。  顔には笑みを張り付け、内心で「あの木瓜帰ったら絶対いてこます」という怒りと殺意を胸に抱き、もうこの際どうなっても知るかとばかりに、半ば自棄気味に懐から名刺入れを取り出し、名刺を差し出した。 「今日は宜しくお願いします」 「はい! お二人の門出に相応しいものにしましょうね」  名刺を受け取ったミリシャが名前を確認しつつ、次に山積みとなっている書類の束や冊子を、開いて見せる。 「えぇと、最初に奥様からいただいた資料による予算ですと、こちらのプランが最適かと思うのですが」  聞きながら冊子と書類の束に素早く目を通していく。
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