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「少々申し遅れました。私、こういう者です」
「あ? あぁ。えぇと」
名刺を渡され見ると、そこには肩書きと名前、結婚式場の連絡先が記されている。
プランナーのお姉さんこと、ミリシャは相変わらずにこやかだ。
笑顔で返しながら、オフィーリアはしばし迷う。彼とてきちんとした名刺は常に持ち歩いてはいるのだが、果たしてこの場で「こういう者です」とかのたまいながら渡して良いものなのか、とーー。
あくまでも今日は代理の身。
それなのに平然とパートナーとして名刺を渡すのはどうなのか。
しかも、こうしてナチュラルに対面しているにも関わらず、オフィーリアの容姿に何の疑問も抱かないという事は、今日がアニーのパートナーというポジションなる相手と、初対面であるのに他ならない。
ちらりとアニーに視線をやるが、今日が打ち合わせ初日だとは聞いていなかった上、ミリシャはオフィーリアにターゲットを絞って名刺を寄越してきた。
……という事は、アンダーテイカーはいまだ一度もこの場には足を運んでいない、という事実があるのに他ならないだろう。
顔には笑みを張り付け、内心で「あの木瓜帰ったら絶対いてこます」という怒りと殺意を胸に抱き、もうこの際どうなっても知るかとばかりに、半ば自棄気味に懐から名刺入れを取り出し、名刺を差し出した。
「今日は宜しくお願いします」
「はい! お二人の門出に相応しいものにしましょうね」
名刺を受け取ったミリシャが名前を確認しつつ、次に山積みとなっている書類の束や冊子を、開いて見せる。
「えぇと、最初に奥様からいただいた資料による予算ですと、こちらのプランが最適かと思うのですが」
聞きながら冊子と書類の束に素早く目を通していく。
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