第一章・ーツンデレ刑事と女王様ー

14/14
前へ
/25ページ
次へ
 職業柄、一度にいくつもの業務をこなすのは得意な方なので、提案されたプランは、まぁ金持ち仕様だなと即座に判断出来た。  出席者とか、今は決められない部分は後回しにするとして、少しアンダーテイカーを凝らしめる意味も込めて、色々決めてやろうと画策する。 「そうですね……。では今日は、取り敢えず出席者に提供する食事と、ドレスから決めていきたいのですが。後は、会場の規模も」  アニーにはなるべく恥をかかせないようにと、普段は絶対使わない、洗練された言葉遣いと仕草で対応すると、何故かミリシャが少しばかり赤面する。  何故だ。とばかりに隣を見ると、やはりアニーも、オフィーリアを見詰めて赤面しているのだ。 「あの……。何か粗相をしてしまったでしょうか?」  意味が分からないため、苦笑しながらも、素直にそう質問してみるが、ミリシャはやはり、見惚れているといった感じで返事をしてくれない。 「……アニー、何か言ってくれないかな?」 「……す」 「す?」 「凄く、格好良い……!」  視線を向けると照れながら逸らされて、でも焦りつつ応えてくれたアニーに、「何だそういう事か」と小さく息を吐く。  別に今の姿と言葉遣いが素ではない。  むしろシュバリエ辺り、よくこんな面倒な立ち居振舞いで素とか言っていられるな、とか感心しているくらいには、絶対したくない対応の仕方である。  だからして、そういう反応をされても困る。非常に困る。 「話を進めたいのですが」 「……はっ。も、申し訳ありません私とした事が! よりによって依頼主様の御伴侶様に見惚れ……違います落ち着いて私!」  内心で「……いやほんまに落ち着け」とは突っ込みを入れたものの、会話にならないのでは仕方ないとばかりに、強制的に再開させる。 「では、時間も勿体ない事ですし、決めていきましょうか」  そうしてようやくの事で、話がきちんと進んでいくのだったーー。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加