第一章・ーツンデレ刑事と女王様ー

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 ーーここはイグレシオン。そう大都会でもなく、だからといって、ド田舎でもない。  よくあるような、特に大事件も起こらない、比較的長閑(のどか)な街並みが並ぶ、平和な場所である。  そんなイグレシオンに佇む、何だか場違いな所轄署がある。  イグレシオン署陰契課。世間からは吸血鬼と呼ばれ、恐れられる“昏きもの”を主に雇い、人間も入り交じって働く。  そんな、人間が犯す犯罪専門ではない、何か超常現象とか、“昏きもの”が起こす事件や事故を取り締まるような、いわゆる一つの、対“昏きもの”用の警察署である。  そんなイグレシオン署で働く人々は実に様々だ。  今日もイグレシオン署内で、暇そうにしながら椅子に腰掛けているオフィーリア=コーラルブルーが、迷惑そうにしながらも無言を貫き、書類に目を通している青年を睨んでいた。 「……オフィーリア、先刻から視線が煩い。何か用事なのか?」  堪えかねた青年が仕方なさそうに問いかけるのに、何故か盛大にため息を吐いたオフィーリアが返す。 「折角今日で定期健診終わりで、もうしばらくここにこんで()ぇ言うんに。何で肝心のシェイカーがおらんと、おらんで()ぇ自分がおんねん」  ここまで一息である。  スーツはブラックの上下に、ブラックに近いダークグレーのワイシャツで、今日はネクタイではなくブルーの鎖を水晶で留めたループ・タイを着用しているオフィーリアは、フォーマルな感じのコーデでまとめている。  ネクタイを締めないのは珍しいなと思いつつ、青年もしかめ面で反論する。
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