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そうかもしれない。男と女では性別が違うのだから、友人ははぁーとため息をついたけれど、そのため息が幸せのように感じたのは間違いではない。 その表情が幸福そうに見えたから、そんな曖昧な理由で無理矢理、自分を納得させた。 「それでさ。貴女はどうなの? もう結婚して一年よね。そろそろ子供はできそうなの?」 それはきっと悪気はない。幸せのおっそわけというやつだった。自分に子供ができたから私にも期待する視線と気持ち。それは喜ぶものだったけれどセックスレスの私達に子供などいるわけもなく。 「ううん、私達にはいないわ。それに子供がいないことも選択肢の一つでしょう?」 それに、 「私は子供が生まれてきても、きっと愛せないと思うから子供はいらないわ」 下手な嘘をつくぐらいなら、本心を話した。私はセックスも嫌いだが、それ以上に子供が嫌いだった。積極的に傷つけたりしたいとは思わないけれど、できれば関わりたくない。 セックスしたら当然、子供を妊娠するリスクを背負うことになる。そうなった時、私はその子を愛さないし、愛せないだろう。腕に抱いたとしても大きな肉塊か、岩でも抱えていることを想像してしまう。 「ごめんなさいね。貴女の気持ちは嬉しいけれど、やっぱり無理なのよ。私は」 「そ、そう。はは、ちょっと調子にのってたかな。私。でもさ、これは自慢したいからとか、そういったことじゃないの。もしも妊娠したり、結婚するってことになったら一番に貴女に報告しようって決めてた」 「それは両親や親族じゃないの?」 「それは別で、ずっと友達は貴女だけだもの。私はこんな性格だからさルールとかいい加減なところがあるでしょ。それで仲違いしたりして長続きしないしさ」 あーっうまく言えないと友人がなやむ。 「ううん。わかるわ。意地悪なことを言ったのは私のほうよ。私だって貴女が妊娠したことも素直に喜んでるし祝福してる。きっと後輩さんも喜んでくれるわよ」 それは私も同じだ。私の過去の事件を知っていたり、偏見や妙な正義感でおせっかいをやく人はいたけれど、そういった人は少しずつ離れていった。友人のようにずかずかと土足で踏み込んで来るタイプは珍しい。 「そうかなぁー、めっちゃ不安だったの。お父さんもお母さんも報告はしたけど、できちゃったからさぁ一人で育てる勇気もないし」 「けど産みたいのでしょう?」 「うん」 「なら、その決断は間違ってないわ」 どの口がそう言うのだろうと思ったけれど、私は友人を慰めるために言葉をつむいだ。きっとこのほうが正しいと信じた。 「うん。うん。がんばるよぉ」 そう言って泣き崩れる友人。日帰りの旅行だったけれど、こんな状態では帰るに帰れない。店を出て近くのホテルを借りた。急なことで一部屋しか借りられず二人で一つのベッドを使うことになった。 「ごめんね。ちょっと寝るわ」 ごしごしと目元をこすりながら友人がベッドに潜り込む。珍しく号泣したことが恥ずかしかったらしい。私も酔いを冷ますために外に出た。夜風が涼しくてホテルの近くにあった公園で一人ボーッとブランコをこぐ。 子供の頃は大きいと感じていたブランコも大人になってからはやけに大きく感じた。童心に帰りたくなって無心でこいでいく。少し楽しかった。 「そんなところでなにしてんの?」 と言ったのは私と同い年くらいの男だった。服装は適当で何度も着たようなシャツにジーンズ、そしてくしゃくしゃな頭、きっと天然パーマだ。片手にはコンビニの袋を持っている。中身は大量のビールだった。 「童心に帰ってるのよ」 「楽しい?」 「ちょっとだけね」 ふふっと笑って見せる。 「女の人がこんな夜中に一人で平気わけ?」 「私みたいな女を犯しても意味なんてないわよ」 一度はレイプされた身よとはさすがに言わない。 「それって誘ってんの? そこホテルだしさ」 「そう思ってるなら強引に襲ってみる?」 もしかしたら私は無意識に犯される。強姦、レイプされることを望んでいるかもしれないとバカなことを考えた。 「そう? ならホテルに行こうかな」 男は強引に私の手を引いた。がしゃりとブランコが揺れて男の顔が間近に迫り、ペチンとデコピンされた。痛みに目を白黒させていると。
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