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「ちょ、本気?」 「太ももならいいでしょ? それとも寸止めして我慢できるの?」 「しょーじき、ちょっと限界かも」 男のそれを太ももで挟みながら、指先で愛撫する。久しぶりに触ったそれは熱くてピクピクと痙攣していた。もう少しだ。男が私の胸を揉みその先端を指先でいじる。私は少し身体を動かして陰部にそれを差し込んだ。 男がうめき声を上げて、絶頂に達する。強引にねじ込んだそれが私の中で暴れる。お湯が汚れるのも構わずに私の中に満たされる。男は少し怒った顔をした。 「責任とれないよ?」 「いいのよ。それで、いいのよ」 もう止まらない。男に丁寧に身体を拭いてもらう子供のように甘えながら私は男に抱きつき耳元で言った。首を締めて、殺してと。 男は何も言わなかった乱暴にベッドに私を連れていくと馬乗りのまま首に手を回した。少しずつ、少しずつ首を絞められる。感覚。視界が点滅し、涎がくちから溢れ出す。ばたぼたと身体は生きようと必死に抵抗するのに私は死を望む。男の太い指が、手が私の首を絞めていく。 殺してほしかった。死にかった。ずっとあの夜からずっと私は死にたかった。夫ではダメだった。彼は私に生きることを、共に生きて子供を望んでいる。それではダメだった。 「殺して、犯して、好きにしていいからぁ」 私の死体はどんな顔をしているだろう? 苦痛だろうか? それとも快楽だろうか? きっと全裸でホテルで死んでいる光景は、 「やっぱりダメ」 男は私の首から手を離した。 「なんで、どうして殺してくれないの?」 「だって殺人犯になりたくないし。お姉さん、笑ってるじゃん」 え? と思って私は顔を触った。笑っていた。私は笑顔だった。 「そんな人を殺してもつまんない」 「貴方は殺人犯なの?」 「どう思う?」 ニッコリと不気味な笑顔。目の前の見知らぬ男。簡単に人を殺そうとする男。胸が高鳴る。 「どうでもいいわ。そんなこと私は、そうね。死にたいのよ」 「うん」 「死にたくて、でも、きっと一人ぼっちじゃ寂しくて死ねないのよ」 「そうかもね。お姉さんきっと死ぬ勇気なんてなさそうだし、自殺なんて無様な死にかたなんて選べない」 男は小さな小瓶を取り出した。中には二つの錠剤が入っている。 「ゲームしよっか。お姉さん」 「ゲーム?」 「そう。この二つの錠剤の片方は毒薬ね。もう一つはビタミン剤。どちらか一つを選んでお互い飲み込む。あ、反則はダメだからね」 「反則って飲み込んだふりをしたり、わざと吐き出すみたいなやつ?」 「そう。じゃあ、やろっか。お姉さん」 お互い、しっかりと目線を合わせながら錠剤を飲み込んでビールで流し込む。そのまま男がキスをしてくる。反則できないようにするためらしい。 求められたものに答えるように私も男を受け入れる。ビールと唾液が混ざり合い、お腹に薬が入っていく。男のそれが強く主張している。私は足を広げて陰部を開いた。男のそれが私の中に入ってくる。 一度めよりもすんなり入ったそれは興奮と交わって強かった。手を繋ぎ抱きしめる。男の背中に爪をたてて強引に引っ掻いた。 私は傷をつける。この男と夜をともにしたことを、その背中に刻み込む。男もそれを受け入れそして男の腕の中で眠りに落ちた。 朝になる。目覚めると隣に男はいなかった。私は生きていた。そして男はいない。手紙が枕のそばに置いてある。 「ごめん。あれどっちもビタミン剤」 「騙された!!」 いいけど気分を切り替えてホテルをチェックアウトして友人と合流した。なかなか帰ってこない私に心配していたけれど、適当な理由を並べてごまかした。 まさか男と一晩を共にして死ぬかもしれないゲームをしていたなんて言えるわけがない。胸の奥底がとくとくとうるさく感じた。
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