魔術師殺人事件

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事件の日とは対比して晴天となった午前。小さな小包が届いた。中には心持ち嬉しい程度の金貨とあまり気にするなと一言だけ書かれた手紙が添えられていた。私は手紙を金貨の中に押し込むと一回りほど大きい本に目を戻した。「もしかしてそれ魔術書ですか」助手は猫を抱えていた。確か近所に住み着いている野良猫。名前は覚えていないがよく懐いている。「そうだよ」本に目を据えながら端的に言った。「見つけてあったんですか」助手は目を輝かせながら覗き込む。魔術書には悪魔召喚の他に呪術や神託の方法が精細に記述されていた。そして特定の場所で行う殺害方法についても書かれていた。メイド長が持っていた魔術書にも類推する内容が書かれていたに違いない。「先生、軍に渡さないんですか。追加でお金がもらえるかも」確かに魅力的だが軍の行動が気になる。内容が掴めるまで暫く持っていても問題はないだろう。「その時が来たらね」そう言って私は借り物の本を閉じたのだった。
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