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俺がもっとも苦手とするものは、「自己紹介」である。
幼い頃から「自己紹介」をする度に俺は地獄を見てきた。
学校に行くようになり、進級してクラスが替わるとその度に「自己紹介」をしなくてはいけないと知った時、目の前が真っ暗になったものである。
中学二年生になった今も、
「岡村空(おかむらすかい)です。宜しくお願いします」
と言うと、案の定、クラス内は笑いに包まれた。
止してくれればいいのに担任が
「岡村君の御両親はクリエイティブなお仕事をされているのですか?」
なんて聞くから、ますます嫌になった。
俺の父は中小企業のサラリーマンで、母は市営体育館のパートの受付兼事務員である。
そんな普通の二人がどうして我が息子に「スカイ」なんて命名したのか、本当に謎である。
みんなが笑う中、唯一黙っている人物がいる。
幼馴染みの田中皇帝(たなかかいざー)だ。
俺と皇帝は幼馴染みの親友で、俺が心を許せる数少ない人間の中の一人である。
今年も皇帝と同じクラスで良かったと思っていたら、もう一人、俺を笑わない人物がいる事に気がついた。
眼鏡の似合う、真面目で本が好きな優しい女の子として知られている熊野黄熊(くまのぷう)さんだ。
彼女も同じクラスだと思ったら、何だか妙に嬉しくなった。
だけど、熊野さん。
ごめん。
「くまのぷう」は、俺でも笑うわ。
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