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1話…電話会談編
2032年11月某日。
内閣総理大臣に就任して早1年、内閣支持率は先日の世論調査では75パーセント。古希を迎えた田舎のお袋はつづがなく息災。今日も畑のサツマイモを手ぬぐい片手に掘り起こしていることだろう。一服の茶を啜って、よっこらしょっと少し曲がってきた腰を摩ってたり。
都心を行き来する鉄道、飛行機雲、東京湾に浮かぶ貨物船、カラスやハトに至るまで欠伸をしているように長閑で平穏。経済は円高の恩恵を受け活性。おかげさまで殆ど基本的に裏で何かやらかしている烏合の衆にあっても閣僚の不祥事沙汰もない。いまのところ。
いまのところ、私、及川徹はピンチです。
いや、かなり全力で控えめに言って大ピンチだ。
「え~、一問ずつ伺います」
そこは総理官邸の1階、記者会見室。もしも俯瞰して自身を見ることが出来るなら何の気なく選んでしまった格子柄のネクタイが、絞首刑直前、監獄に収監された囚人服柄に見えたことだろう。まずい、かなり不味いことになってしまった。もうこの言葉、何度リピートしたことか。
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