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そろそろ勘弁してくれと音をあげたくなる。今すぐ執務室に引っ込めるのなら迅速に彼らに土下座の一つや二つしてしまっても構わないところなのだが、そんな気分でもある今日この頃、なんて言う時点、私のメンタルはボロボロだ。「え~っと、それは公式の方? それとも非公式の方?」と、だからお気軽に手安く襤褸も出る。
「は? 公式非公式と仰られますと?」
「失礼、ご質問の話があったかということでありますが、え~、外交上の話でありますので、え~、詳細につきましては、え〜、私から申し上げることは控えさせていただきたい、という意味で公式非公式です。以上です」
「……。ありがとうございます。では……続いてですが――」
いまいち納得していない記者団を尻目に私は内心で盛大にため息を吐いた。会見直前の事を思い出さずにはいられない。
官邸内の一室、桜色に染まった絨毯が華麗な大ホール、ススキをモチーフにした模様が刻まれた土の塗り壁など和を感じさせる小ホールとか、または大理石のテーブルなど、そんな贅を尽くしたしつらえは何処にもない。使われなくなったチェアやテーブルが所狭しと重ねられた埃塗れの所謂そこは倉庫だ――。
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