プロローグ

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 ともあれ、私は先生方の傀儡になるつもりはない。今でも私の恋人シアの母国との関係改善は、総理となった私の本懐だ。仕立て上げられるのなら、就任するまでは傀儡の如く演じるまでだ。任命されたのなら、大いに暴れてやろう。歴代の総理が成せなかった不可逆的関係改善を成就するために。  しかし、大きな誤算もある。明日、投開票される韓国大統領選だ。事前世論調査では野党のミョン・シア氏が与党のソン・ドクジュ氏を抑え圧倒的有利に立っているのだ。  私はこれは決して何があっても命にかかわる問題につき彼女にバレてしまってはいけないが、対抗馬のソンさんを内心では全力応援している。  学生時代、清楚で可憐、純真というイメージが的確な彼女は、現在どう曲がりに曲がったのか、政界で荒波に揉まれた結果だろうか、大袈裟に言えば特攻服を着た昭和のレディースのような勝気な性格になってしまった。勿論それは私との間柄だけで、大衆の面前では知的でクールな大人の女性を演じている。つまり大いに猫をかぶっているということだ。そんなことを私が話していたと知られれば確実に射殺される案件につき此処だけの話にして貰いたい。  ともあれ彼女が大統領に就任し外交上の駆け引きをする必要があると考えると、普通にやり難いよなと思う。そんなわけでソンさんを全力応援した次第だ。  否、本懐を遂げる為には僥倖だろうか? 現時点では分からない。それはこれから始まるのだから。どうか私たちを見守ってほしい。  一先ずはマイクイーン、シアとの出会いをプロローグとしよう。
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