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打ち上げ花火を模したイルミネーションの観覧車を背景に降る雨粒は虹色で、ミョン・シアのロングヘアを光悦に濡らしていたのは13年前。彼女との出会いは22歳の時に遡る。
綺麗だ、と思わず呟いた私は思いもしない、彼女はまったくの日本人で価値観が反目する韓国人だとは。それはナンパの返事からそうだったのだろう。
濡れるよ、何処まで? そう声を掛けビニール傘をかざしたのは勿論下心あっての事で、要らない気づかいとつっけんどんに返されたおかしな日本語のイントネーションに私のそれまで保ってきた初恋の扉は刹那にこじ開けられたんだ。だって彼女の瞳に花火が打ち上がっていから。吸い込まれそうだった。
否、間違いなく吸い込まれていた。じゃなきゃ駅まで付きまとったりしなかったし、何度も何度もあの手この手の切り口で口説き文句を言ったりもしなかった。結果は惨敗だったけれど、一度振り向き何か言いたそうにしたシアの表情に私は改札越しに思わず声を張り上げずにはいられなかった。「一目惚れだった。また何処かで出会えたなら僕は性懲りもなく君にアピールするよ」それが功を奏したと知るのは数か月のこと。
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