プロローグ

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 大学のキャンパスに彼女を見かけたのはそのシーズンプレミアリーグが開幕する日だった。オックスフォードの街は正月を迎えたかのような浮ついた雰囲気にあった。老若男女、何処かしこ話題はサッカーで、シアのいでたちも7番のユニフォームだった。 「サッカー好きなの? 次の試合一緒に行かない?」  私は話題がある事に感謝したが、それは本当に束の間のことで、開口一番シアは私を奈落へ突き落としてきた。 「行かない。勝手に行って。全く興味がない。サッカーじゃなくて、君の方」  その翌日だっただろうか、キャンパスの中庭、ベンチで昼食を摂るシアに声を掛けた時はもっと酷かった。 「不味くなる。君が隣に座ると折角のサンドイッチが台無し、今すぐ消えて。生理的に受け付けない」  それでも私の唯一誇れる長所は一つ、挫けない。高校の担任に君の成績では東大は無理だと突き放された時も、それでも諦めなかったから法学部に現役合格できたわけでオックスフォードにも留学できた。それでも諦めきれず言い寄ったから、もうやけくそに近かったけれど、十回目ぐらいのアタックだっただろうか彼女から違った返事を引き出せたんだ。そうあの日も雨が降っていた。
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