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「ああ、我が愛しきジューヌ……」
堅牢な城壁の下に群れなす兵士の一人として、そんな彼女の最期をジルドレアも目の当たりにした。
無論、尊崇と恋慕の情を抱く彼女の処刑は、他の兵士達同様、ジルドレアにとっても大きなショックだった……しかし、それとともに彼女の死は、むしろ神々しさを感じるほどに大変美しいものでもあった。
赤々と燃える炎に焼かれ、青空に立ち昇る煙とともに天へと召されゆく聖女……相反する二つの感情を想起させる、この信仰にも近き尊き対象の喪失は、ジルドレアの中に何かを芽生えさせた。
「……そうだ。ジューヌは最も美しい姿のまま天へ召されたんだ……彼女は〝少女〟という汚れなき完全な人間として、幸福にもその生を終えることができたんだ……」
突然の、そして残酷な少女の死を受け入れるために、「むしろその早すぎる死によって、彼女は最も美しい姿のまま生涯を全うできたのだ…」とジルドレアは解釈することにした。
いや、さらにその逆説的な理論を昇華させ、〝未成熟の汚なき少年・少女こそが最も優れた人間の姿である〟という、なんとも歪で極端な思想へと至ったのである。
その後、けっきょく包囲されたエジュノーは鎮圧軍の猛攻に抗しきれず、ジューヌの死を前に怒り狂った兵達によって、完膚なきまでに蹂躙された。
同じく無慈悲な虐殺をジルドレアが行ったことは言うまでもない……。
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