La Moustache Bleue ~青髭~

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 ここまででも充分に下劣極まりない所業であるのだが、さらに彼を悪魔へと駆り立てたのは、オフランソ・プラレーリュという自称〝錬金術師〟である。 「ご主人さまの楽園建設、不肖、このプラレーリュがお手伝いいたしましょう」  口髭を生やしたその痩せ型の男は、イヤらしい笑みを浮かべながら慇懃に頭を下げる。  雇ったならず者経由で売り込んできたその錬金術師は、怪しげな薬品で少年少女の誘拐やその洗脳を手伝ったり…… 「彼らのように純粋で完全な存在になるためには、彼らと交合し、賢者の石(エリクシール)を造り出さなければなりません!」  と、独自の錬金術理論で性魔術をジルドレアに勧めた。 「うむ! それこそが卑金属を貴金属に、汚れた人間を純粋な存在へと変える賢者の石(エリクシール)の錬成!」  見るからに怪しく、いかにも詐欺師っぽいオフランソではあるが、それはジルドレアの到達した真理と、もともと彼が持っていた性癖に極めて親和性の高いものであった……すっかり信じ込んだジルドレアは少年・少女らを相手とした性魔術に傾倒し、彼らを肉欲の対象にもしたのである。  こうして、錬金術の薬と恐怖による洗脳で子供達を支配し、なんとも背徳的で悪趣味な楽園(ハーレム)をジルドレアは築き上げた。  城の奥深くで起きていることは外部から覗い知れず、また、彼の洗脳は強力であったために、ジルドレアの楽園はその存在すら知られぬまま、しばらくの間、何事もなく密かに営まれ続けた……。  だが、盤石に思われた彼の楽園も、いつかは終わりの時を迎える。  それは、宗教的行事のために地元教会の司祭サンチャ・デ・アエンヌが城を訪れた時のこと。 「──お助けください神父さま! 僕達みんな、ここでひどいことされてるんです!」 「うむ。もう大丈夫じゃ。そなたらを救うためにわしは来たのじゃからな」  連れて来られて日がまだ浅く、比較的洗脳の浅かった男の子の一人が隙を見て司祭に助けを求め、それを発端にジルドレアの悪事が発覚したのだ。  いや。実を言うと、近隣の村々で頻発している少年少女の失踪事件に教会やアルビターニュ領主も不審感を募らせており、ジルドレアへの疑いを持ったサンチャ司祭は、密かにその証拠を掴もうと探りを入れていたのだ。  その後、少年を匿って城を後にしたサンチャ司祭はアルビターニュ司教区へすぐに告発。早々、異端審判士と領主の軍がチャントセー城へ差し向けられた。 「──城の中はもぬけの殻だ! やつはどこへ行った!?」  ところが、子供達は無事保護することができたものの、異端審判士達が到着した時にはもうすでに、ジルドレアとその胡散臭い協力者の姿は城のどこを探しても見当たらなかった。  背徳極まりない行いを続け、さらにはプロフェシア教の禁じている魔術にまで手を出したのだ。捕まれば、たとえ武功のある騎士といえども異端の罪で極刑は免れない……鼻が利くことにも当局の動きを素早く察知したジルドレアとエセ錬金術師は、一足先に城から逃げ出していたのである。
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