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「──クソう! 騙しやがったなあーっ!」
「いい船長になってくれると信じてたのにーっ!」
給水に立ち寄ると騙され、上陸しな無人島に置き去りにされた海賊達が、去りゆくジルドレアの船に向かって怒りの声を波間に響かせる。
「騙したとは人聞きの悪いーっ! だから言ったろーう!? 僕は君らのような醜い野郎どもの船長になる気はさらさらなかったとーっ!」
そんな彼らを船尾楼に立って眺めながら、愉しげな笑みを浮かべてジルドレアは高らかに冗談を返す。
船長になった途端、ジルドレアはその本性を見せ始めた……彼はまだ大人になり切っていない美少年の船員を除き、その他大勢の一味の海賊達を騙し討ちにして放逐したのだ。
無論、かつて居城に築いた〝楽園〟同様の、彼の背徳的な欲望を満たしてくれる海賊団を造るためである。
ただし、大幅に船員が減ってしまったため、三隻あった船の中の一番大きい〝ベンチャー号〟だけを残し、また、トリニティーガーへ戻ると随時、新たな美少年・美少女の船員をスカウトして人員不足の穴埋めに充てた。
「──船長ーっ! 巨大なガレオンがいまーす!」
と、そんな折、獲物を求めて徘徊していたジルドレアの船で、マストの上の檣楼に配置していた見張りの美少年が、一艘のガレオン船を発見して報告してくる。
「うーん……どうやら奴隷船らしいね。国籍はエルドラニアか……もとは軍艦だったっぽいな……」
急いでジルドレも遠眼鏡で確認してみると、それはエルドラニアの国旗を掲げた、奴隷を運ぶ船らしかった。多数の砲門を塞いだ跡があるので、もとは重武装のガレオンだったものを、カノン砲を取り外して積載量を増やすために改修したものらしい。
だが、それでもカノン砲は10門以上残っており、大型船のために乗っている船員も多いだろう……。
「エルドラニアのガレオンか……手強い相手だが見逃すには惜しい獲物だ……一か八か、ここは大博打に出てみようじゃないか!」
「おお! さすがは僕らの船長だ!」
「船長ジルドレア、カッコいいです!」
巨大なガレオンを睨みつけ、勇敢な判断を下すジルドレアに、美少年・美少女海賊達は羨望の眼差しで賛美の言葉を送る。
しかし、ジルドレアが襲撃を決意したのは、なにも彼が勇敢な海賊だからではない……確かに奪った奴隷を売れば莫大な資金が手に入るのだが、じつは、もっと俗的で下品な理由から、彼はこの危険な賭けに出ようと考えていたりする。
奴隷船の襲撃に成功すれば、載っているオスクロイ大陸出身の奴隷の中から、まだ一味にはいない黒人の美少年・美少女が手に入るかもしれない……それに、運がよければ船員であるエルドラニアの美少年だって我がものとすることができる……海賊としての成功ではなく、そんな己の欲望からジルドレアは勝負に出たのである。
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