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* 分岐ルートA or B *
***
好きなことで飯が食えるに越したことはないだろう。
だけど、好きなことが飯のタネとして成立する可能性は極僅か。
更に飯のタネを開花させるためには人一倍のセンスと努力という栄養が必要不可欠。
寄り道する時間さえ勿体ない状況と言えるだろう。
「……かと言って、受験勉強の時間を割いて絵を描くなんて度胸は持てないなあ」
ボヤきながら俺はスケッチブックを封印する。
俺は絵を描くことが大好きだ。
そして、絵を描く仕事に就きたいと願っている。
だけど、こんなど田舎の町のコンクールでさえ最優秀賞に程遠い自分が絵のセンスがあるとは悔しいが思えない。そして、そんな絶望的なセンスを持って、努力だけ切り拓くことが可能だと夢を見ることもまた苦しい。
ラストチャンスだとは思っている。
ひたむきに夢へ向かって、一心不乱に努力する最後の夏。
だけど、俺は安定した未来を掴むためタネを撒く。
確かに俺は絵を描くことが大好きだ。
そして、絵を描く仕事に就きたいと願っていた。
だけど、同時に安定した未来もまた捨てがたいと願ったのだ。
だからこそ、俺は『受験勉強』という名の勉学を勤しむ。
そして、安定した未来を掴むためのタネを撒く。
もしかすると、好きなこととはかけ離れている結果になるかもしれないけれど……。安定という名の希望した飯のタネを成立させるために。
今日も俺は一心不乱に勉学に勤しむ。
いつか芽生える飯のタネが出来るだけ希望に叶えばいいと願いながら。
【Fin.】
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